第33話 リビングデッドはリベンジしたい

 エビルズの手には俺がさっき投げつけた武器が握られていた。

 これで俺を攻撃しようっていうのか……!


「ウケトレ。ワレトオヌシデハチカラノサガオオキスギル」


 予想外。エビルズは俺に武器を雑に投げつけると、深く欠伸をした。欠伸なんて……ゾンビの癖に‼


「けっ、喋るゾンビとは驚いたが、武器を渡すあたりやっぱりゾンビだな。これで貴様に勝ち目はない‼」


 両の腕に武器を持ち、戦闘の態勢を取る。油断してたがあれだけのパワーだ。星を確認しておこう。


「なになに……は?」


 星五の突二? 嘘だろ?


「そうか……こいつが星五オーバーのゾンビか……」


 本命のご登場ってわけか。


「ついてる……けどついてねえな」


 こいつを倒せれば一気に三百体分のポイントが得られるが、こっちのチームには最高でもいるのは星四。おまけに相手は突二。三人でも勝てるか分からない。


『エエ……エエエエエエ』

『アウ……アアアアアア』

「……!」


 やばい。そうこうしてるうちにゾンビが増えてきやがった。星五オーバーなんて規格外倒せるかも分からないのに。


「……ニンゲン」

「あ?」


 エビルズは俺に背を向けると、湖の方へと歩き出す。急に俺への興味など失くしてしまったかのように。


「バカにしてるのか?」


 ゾンビのくせに生意気だ。


「……ソナタノツミモオモイガヤツラニクラベレバカルイ。ソナタヘノバツハワガタミニマカセルトスル」

「民って……そこの腐った死にぞこない連中のことか? お前頭に蛆が湧いてんじゃねーか? あっ、湧いてるのか」

「ナントデモイエ。ワレノモクテキハタダヒトツ。ワレヲコノチニヨビダシタモノノショケイヨ‼」

「行かせるかよ……その民達と仲良く死にやがれ!」

「ヤレ」



 エビルズが左手を挙げると無数のゾンビが地面から現れる。こいつら! 地面の中にも潜んでやがったのか!


『ガガ……ア……ガアアアアア!』

『インゲン……ボボズ……』

「クソ……!」


 三百六十度見渡す限りゾンビ。下にもゾンビ。どこを見てもゾンビゾンビゾンビゾンビゾンビ。こうなったらやけくそだ! 威力の低いナイフを腰にしまい、鉄棒を両手で握りしめる。


「ガ!」

「ギ!」

「グ!」

「うるせえ! 後二体出てくるか⁉ ゲとゴしか言えないのがよお⁉」


 こいつらの相手をしてる暇は無い。一撃で殺す。

 ゾンビ三体が同時に俺の頭を狙ってくる。俺はそれを避け一体の心臓を突き、動きを止める。その一瞬の隙を逃さず頭に一撃を入れる。ゾンビは気を失い、膝から崩れ落ちた。残る二体も同様に頭を殴り気を失わせる。


「首を斬るのは後でにしてやる。夢の中で余生を楽しんどけ。エビルズ!」


 僅かだができた道縫うように走りエビルズを追う。エビルズはすでに湖の岸に到着していて、そのまましゃがみ込む。


「デテコイ。カクレルナ」


 エビルズは湖に右手を入れる。すると右腕が月よりも明るく光り輝き、爆発した。


「うお⁉」


 爆風に巻き込まれないよう鉄棒を地面に突き立てる。ゾンビ共も地中に隠れ爆風から身を守っている。爆風が収まると、湖の水は全て無くなり、エディカ達の障壁だけが残っていた。


「アイタカッタゾ……エディカ!」

『ギャー! お化け!』


 うん。ゾンビだな。


「ワレラヲムセキニンニコノチヘヨンダコトヲフカククイルガイイ。サラバ‼」

『⁉』


 ガキンッと鈍い音と共にエビルズは障壁に攻撃をする。しかし障壁はびくともしない。


『ちょっと! 今の爆風で障壁を維持するのに結構魔力を消費したんだから攻撃すんな!』

『流石にもう限界です……』


 エビルズはお構いなしに二人の障壁を壊そうとする。外からでも壊されないようにと魔力を限界までひねり出しているのが目に見えて分かる。すげー不細工な顔してるもん。


「コノカベヲノケロ! コロセヌダロウ!」

『するわけないでしょ! 死にたくないんだから!』

「ワカッタ。イタミヲカンジヌヨウニコロシテヤロウ」

『話聞いてた⁉』


 エビルズはエディカを殺すことに夢中になっている。このまま二人の魔力が尽きたらエビルズを倒せても作戦が続行できなくなってしまう。なんとかこっちに気を向けないと!

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