第27話 生ゾンビとの邂逅
「すげえな。真っ暗で何も見えねえ」
「そのうち夜目が利いてくるわよ。それより、周りだけじゃなくて足元にも気をつけなさいよ」
「それからなるべく音もたてないようにしませんと。開けた場所に出るまでは明かりを灯さないことにしたんですから。ここで大きな音を立てて襲われてしまっては一溜りもありません」
昼間に比べ俺たちは積極的に行動していた。まあ積極的と言っても茂みの中を静かにこそこそ移動しているから傍から見ると消極的なんだけど。
「しっ、静かに。向こうから何か聞こえるわよ」
確かに、人の話し声のようなものが聞こえる。そっと覗いてみると、男が三人いるのが見えた。そして男たちの前にはゾンビが立ちはだかっていた。
「あれがゾンビか……」
ゾンビたちは身体中から体液を漏らし、変な呻き声を上げている。人間と同じような背格好で服を着ているのもいた。
『へへ、星二か……まあ負けやしないだろうな』
『お前ら気を抜くなよ‼ 上位に入れば大金が貰えるんだからな‼』
『おう!』
こっちだってうかうかしてられない。早くゾンビを見つけないと。
「よし、あっちに行くわよ」
「は? なんで?」
協力して倒すっていうのか? そんなことしても俺たちにはメリットがあるというのか?
「決まってるでしょ。あいつらが疲弊させたところをあたしたちが横取りするの」
「この期に及んでハイエナ行為するのかよ⁉ 正攻法で行くんじゃなかったのか⁉」
「あらやだ。あたしはある程度正攻法で行くとしか言ってないわよ。それにこんな暗いんだもの、不慮の事故って言っとけばどうにかなるわよ」
「だとしてもな……⁉」
ブォン、と俺の横を何かが勢いよく飛んでくる。それは物凄く大きな音を立てて木にぶつかると、その動きを止める。
『痛え! 痛えよお!』
飛んできたそれはゾンビと対峙していたはずの男の一人だった。
『な、なんだこいつ⁉ 星二の強さじゃねえぞ!』
『ああ、星四はある! ここはいったん——』
ドスン、ドスンともう二本の木が倒れる。残りの男たちもどうやらやられたようだ。
『き、聞いてねえぞ……なんで星二が……! それもあんなアンデッドなんかがあんなに強えんだよ⁉』
さっきまで威勢のよかった男達は恐怖で顔が引きつっている。
『おめえら! この討伐、俺たちは降りるぞ! たかが星二相手にこのザマじゃさらに強いゾンビ共が出てきたら太刀打ち出来ねぇ!』
『『合点!』』
三人はヒィヒィ言いながら森を後にする。敵は星二か。だが油断は出来ないようだ。
「チッ、使えない奴ら……」
ハイエナプレイしようとしてたクズが何を言ってるんだ。
「文句を言っても仕方ありません。とりあえずまだゾンビは近くにいるみたいですし、さっさと倒しちゃいましょう」
「ああ」
男達がいた場所に行こうしたが、その必要はなかった。男達を倒したと思われるゾンビは近くまで来ていたのだから。
「フシュウウゥゥ……」
改めて見るとその魔物——アンデッドはとてもおぞましい姿をしていて、直視出来ないくらいに身体がドロドロにただれていた。
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