第29話 リビングデッドの呻き声
「おぅら!」
「……⁉」
ゾンビの足元にしゃがみ込み、両方の太ももを斬りつける。ゾンビは両膝を地に着いてから、全身が倒れる。
「ガガガ……」
ふう。散々手こずらせやがって。
「アア……ボボアイ……イボジアエア……」
ゾンビは残る力を振り絞ってるのだろうか、俺に向かって何か
「知るか! 散々攻撃してきやがって! 今更命乞いのつもりか? 何がイボ痔だよ! 臭いの原因はそれか⁉ 死ね‼」
「バンベ……!」
迷うことなくゾンビの頭を身体からバイバイさせる。頭を切り落とした瞬間、ゾンビはピクリとも動かなくなった。よし。完全に死んだな。ゾンビに刺したナイフを回収して、ゾンビの頭を袋に詰める。それにしてももう少しコンパクトな方法は無かったのか?鼻を削いでくるとか親指を二本持ってくるとか。
「しかし星二でこれだけ苦戦したんだ……先が思いやられるな」
今回の討伐ではゾンビの星の数は関係無しに、純粋な倒した数での勝負になってくる。どのチームもこぞって星が低いゾンビを必然的に狙うことになるはずだ。どんなに強い戦功者だとしても、負担は小さいのに越したことは無いからな。いや、さっき例外が追加されたんだったな。
「そうだ、エディカ達を助けないと」
そう思い二人の方を見てみると、すでに戦いは終わっていた。ゾンビ達は頭だけを残し、綺麗に絶命している。ヴェノケンの群れを一人で殲滅できるローネルがいるからまだ納得できるけど……あの、身体は?
「ハア……ハア……すごく気持ち悪かった」
「ええ。二度と目にしたくありませんね」
「なあ、ゾンビの身体はどうしたんだよ……」
恐る恐る二人に聞いてみる。
「そんなの気持ち悪かったから燃やしたわよ」
「本当は全身を燃やそうかとも思ったんですけど、頭が無いと報酬が貰えないので仕方なく頭だけは残しておきました」
「今の戦闘であたしたちは魔力を半分使っちゃったから、あんたには死ぬほど働いて貰うから覚悟しなさい」
「魔力の半分を使ったって……」
それほどの相手ってだったってことか。もしかしたら星三や星四も混ざっていたのかもしれない。
「あたしが障壁を張ってローネルがそこから炎魔法で攻撃をする熾烈な戦いだったわ」
「お前何もしてないじゃん!」
「障壁魔法だってかなりの魔力を使うのよ!」
「てかお前は炎魔法が得意じゃなかったっけ? 役割逆だろ! 慣れない魔法を使ったから半分も魔力が減ったんじゃないのか!」
「……‼」
「確かに!」って顔してる――!
「二人とも、いいから頭を回収しましょう」
ローネルに促され倒したゾンビの頭を袋に詰めていく。大体三十個で袋はいっぱいになるから、新しい袋を用意しないと。てかこれほんと効率悪いな。
「限突で少し強くなってるとはいえ、流石に三十個は重いな……」
「肌身離さず持ってなさいよ。ここまできて盗まれたりしたらただじゃおかないから」
「わかってるよ」
袋の口を強くしばり、背中にしっかりとくくりつける。よし、これで大丈夫だ。
「ハルトさん、ひとまず会敵しないように身を隠しましょう。この討伐、他のチームならともかく私たちにはとても不利なものかもしれません」
ローネルは真剣な表情で言う。なんだ?敵の相性とかそういうもののことか?
「とりあえず今は隠れ場所を探すわよ。状況の説明はその後にするわ」
「よくわからないけどわかった」
「よし、行くわよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます