第24話 イベント開始
こうして迎えたレイド当日。チーム登録の受付を終えた俺たちは王宮前の広場にいた。正午からの開催だがすでにたくさんの人が広場に集まっている。ちなみにチーム名は《エロイ》。恥ずかしすぎる。
「さあ行くわよあんた達! 星五を手に入れる機会なんて滅多にないんだから! 最低でも星四は手に入れられる順位に漕ぎ付けるわよ!」
そもそもまともに準備してないのにどこからその自信が湧いてくるんだ。
「て言うかなんだよこのチーム名!? 酷いにもほどがあるだろ!?」
「何言ってるの。ちゃんとあたし達の名前を一字ずつ取ってる素晴らしいチーム名でしょ?」
「ひょっとして俺だけラストネーム!?」
「不満だった?」
「はあ……もう何でもいいや」
イをハに代えてもなんか変だし。
「わくわくするのもわかりますが、まだ何を討伐するかも告げられてないんですよ?」
「そうだよ。俺もだけどお前だってレイドは初めてなんだろ。始まる前に怪我とかしたら困るからもう少し肩の力抜けって」
「う、わかったわよ」
でも気持ちはわからんでもない。遠足とか修学旅行はこういう集合してるときの方が楽しかったりするよな。
「まだ少し時間もあるし各自持ち物の最終確認でもしましょうか」
「お、そうだな」
えーと、俺が持ってなきゃならないのは…トレンチナイフ(八本、当然錆びたのは置いてきた)と包丁、それに鉄棒と傷薬だったな。お、ちゃんとあるな。
「俺は大丈夫だ。お前らは?」
「あたしも大丈夫よ」
「私も大丈夫です」
全員大丈夫みたいだ。まあ前日あれだけ確認すりゃな。
「あ、そろそろ始まるみたいですよ」
見ると広場の中央にある舞台に役人らしき人物が数名上がっていた。
『あー、あー、皆の衆。今回も良く集まってくれた。こんなにも多くの者が来てくれるとは意外だったぞ』
マンガやゲームで見るステレオタイプの西洋貴族そのまんまの格好をしたおっさんが声を高らかにして言う。マイク放送のように響いているのはなんかの魔法道具だろう。
「なあローネル。あのおっさんは誰だ?」
ひそひそ声でローネルに耳打ちする。
「あの人はこの国の大臣ですよ」
「なんだ。王様じゃないのか」
「前までは王様が出てきてたんですけど、余りにも話しが長く倒れる人が続出したためここ五年は大臣が代わりを務めています」
校長先生かよ。
『今回の討伐対象はアンデッド…つまりゾンビだ。原因はわからないが、ここ一年で急激に数を増やしている。そのほとんどは街の東の先にある辺境の森に生息しているが、街での目撃情報も何件かある。このままでは民がやつらの餌食になってしまうのも時間の問題だ』
ゾンビか……。映画とかで見るのは動きが鈍かったりするから意外とあっさり倒せる気がする。短い刃物しか持ってない俺でもいけるんじゃないか?
『そういうわけだ。諸君らにはできる限り数を減らしてもらいたい。期限は明日の正午まで。倒した証拠として討伐対象の頭部は持ち帰ること。事前に告知していた通り今回も討伐数が上位の者たちには報酬が用意されている。各自全力を尽してくれたまえ。では、これより大規模討伐を開始とする!』
『『『うおおおおおおおお‼』』』
広場に集まっていた参加者たちが一斉に東へ向かって駆け出していく。
「……」
「……」
「おい、どうした。俺達もとっとと向かおうぜ」
早く行かないと他の連中に狩り尽くされてしまうかもしれない。上位を狙うんだったらスタートダッシュは大事だろう。
「あー……別にいいわよ。慌てる乞食はなんとやらよ」
「上位を狙うんじゃなかったんですか?」
「狙うわよ。こういうのは開幕直後が重要ってわけじゃないってこと。あんなただの無課金連中とは一緒にしないでちょうだい」
「ろくに準備出来て無い俺たちはその無課金連中と大差ないと思うんだが」
「安心しなさい。あたしには完璧な作戦があるわ。よりクレバーに、効率的にゾンビを狩っていくわよ」
作戦か。こいつが考えるとなるとちょっと、いや、大分不安だ。だが前世は一応極東大生だし、それに加えて廃課金だったのならこういう実際のイベントならば得意なのかもしれない。こいつの言う作戦にとりあえず従ってみようか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます