第23話 廃課金の性

 ローネルが鬼の形相でエディカに問いかける。


「何か言い残すことはありませんか?」

「すまんローネル……俺が間に合っていればこんなことには……」

「ハルトさんは悪くないです」

「ほどいて! 美少女を出すまで死にたくはないわ!」


 あの後エディカは持っていた金で召喚をし、当然のごとくその全てがはずれた。おかげで俺も六十八突。頭の中に愉快な仲間が新たに増えてしまった。現在エディカは手足を縛られ床に正座をさせられている。その顔に反省の色は無い。


「そうですか……それは残念でしたね。さようなら」

「ちょっと! 冗談! 冗談だから! その鉄棒を構えるのをやめて! つい魔が差しちゃっただけなの!」

「ではいくら使ったか正直に教えてください。場合によれば情状酌量じょうじょうしゃくりょうの余地があるかもしれませんよ?」

「全部」

「ハルトさん、包丁」

「嘘つき!」


 残念だがローネルは”かもしれない”と言っただけだから嘘ではない。短い間だったがここでお別れだ。


「そ、そうだ! 良いことを思いついたわ!」

「ローネル、四肢はヴェノケンと同じ要領で良いとして、胴体部分はどうすればいい?」

「私に任せてください。簡単な処分の方法を知っています」

「ちょっとは話を聞いてよ! あたしを殺してもメリットなんてないわよ!」

「勘違いするな。俺たちはお前の処刑方法を相談しているわけじゃない。お前をいかにして金に換えるかを相談しているんだ」

脾臓ひぞうだけは残してあげるので喜んでください」

「あたしの臓器売るの⁉ そんな有っても無くても大差ない臓器なんて残されてもどこをどう喜べばいいのよ!」


なら全部売ってやろうか。お前らの業界では臓器が残っているうちは無課金なんだろ?


「そもそもこの世界では臓器なんて売れるわけないでしょ! 便利な薬や魔法があるんだから!」


 何……だと……?


「どうするローネル。こいつの言う通りなら殺したところで俺たちがスッキリする以外メリットがないぞ」

「確かに臓器の売買なんて見たことありませんね。困りましたね……」

「俺のいた世界でも違法だから普通は現場を見れないんだがな」


 俺たち二人は頭を抱える。クソッ、一体どうすればいいってんだよ……。


「しょうがないローネル。今日は明日のレイドイベ……大規模討伐のために俺たちの戦力を補強するのが目的だったろ。俺の戦力が上がっただけマシだと思おう」

「ここで仲間割れしてても仕方ないですしね。星一の新しい人とかじゃなかっただけよしとしましょうか。本当はもっと武器や道具を買い揃えたかったんですが」

「ゆ、許してくれるのね?」


 結果的とはいえ俺は一応目的を果たせているからな。許してやらんこともない。


「は? 何を寝ぼけたことを言ってるんですか?」


 ローネルにその気はさらさらないようだが。


「私たちは今から少しでもお金を稼ぐため依頼を受けてきますので、あなたはしばらくそのままでいなさい」

「え⁉ 嘘でしょ!トイレとかどうすればいいのよ!」

「我慢しなさい。それができなければ助けを呼ぶなりしてください。最悪垂れ流せばいいでしょう。ハルトさん行きますよ」

「じゃあそういうことだからな。せいぜい頑張れよー」

「ちょっと! 花も恥じらう乙女に垂れ流せはないでしょ! 本当に行くの⁉ 待って、謝るから! もうしないから置いてかないでえ!」


 エディカを放置しギリギリまで稼げるだけ金を稼いだ俺とローネルは、何とか最低限の必需品は揃えることはできた。ちなみにエディカはあの後ロープから脱出しようと試みたが、上手くいかなかったようで、変な風に絡まりながら気を失っていた。

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