第14話 真っ黒な裏ワザ
「ギブギブギブ! 黙ってガチャ回したのは謝るから! だからこの手を離してちょうだい!」
「じゃあ首の方は解放してあげます」
「待って、あたしは他の技をかけてほしいわけじゃないしアイアンクローは
天使のような顔で繰り出されるのは顔面の急所という急所を容赦なく刺激する技ばかり。死にはしないだろうけどこれは痛い。
「わかった! わかったから! ローネルと稼いだお金は
「……本当ですか?」
「ほんとほんと‼ あたしの全財産賭けるから‼」
お前に賭ける財産は無いだろ。
「それじゃ信用できません。どうしても許してほしいなら、残っているお金を全部渡しなさい。話はそれからです」
「え、それは……痛い痛い痛い‼ わかったからパンチするのやめて!」
観念したエディカは残った金をローネルに差し出す。かなり未練がましく手が震えているが、自業自得だ。お前のせいで痛い思いしたから助けないからな。
「まだ二十回も回せたのに…」
エディカはぶつぶつと不平不満を漏らし、俺の方を睨んでくる。不満を言いたいのは俺の方だっての。
「ていうかそもそもなんであんたしか出てこないのよ‼ 普通大量に日本人が出てくるのなら佐藤・鈴木・高橋とかでしょ‼ 一ノ瀬なんて少なくも多くもない名前が二十回も連続で出るなんておかしいでしょ!」
「俺に言うな! 俺だって一応被害者だ! 文句があるなら神にでも言え‼」
「何度も言ったわよ!」
お互いがお互いを睨み、今にも取っ組み合いの喧嘩が始まりそうになる。女だからって容赦はしないぞ。三分で締め落としてやる。
『女を攻撃するなんて、お前最低だなぁ!』
変態野郎、お前にだけは言われたくない。後二度と出てくんな。
お互いに睨み続けること数十秒。最初に切り出したのはエディカの方だった。
「そうだあたしに考えが」
「死ね!」
持っていた包丁を取り出し、すかさず投げつける。
「危な! 何すんのよ⁉」
チッ、避けられたか。だがこれはフェイントだ。本命は大きく振りかぶった俺の右腕。このまま眉間にストレートを……。
「そっちがその気ならこっちも迎え撃つまでよ! 燃えなさい!」
「熱う!」
俺の右手が燃えてるう⁉ 畜生、そういやこいつ魔法が使えるんだった! でもこれはこれで好都合だ。燃え盛る腕で渾身の一撃を加えてやる!
「二人ともやめてください! 隣は組合なんですよ! 出禁にでもなったらこれからどうするんですか!」
「止めるなローネル! お前だってこいつに制裁を加えてたじゃねえか! だったら俺にも恨みを晴らす権利がある!」
「先に仕掛けてきたのはハルトの方よ! あたしは自分自身を守るためと召喚した者の責任としてこの馬鹿をここで始末する必要があるわ!」
「ああもう仕方ないですね……」
わかってくれたか。これで心置きなく殺ることが出来る。
「やめないのならこのお金を持って出ていきます」
「それだけはやめろ! 明日から生きていくことが出来なくなる!」
「それだけはやめて! まだ見ぬ美少女に会えなくなるわ!」
それは果たしてガチャ課金不可能と餓死の二択の内のどちらなのだろうか。
「それが嫌なら仲直りの握手をしてください」
ローネルに
「しょうがないわね……。今回は特別に許してあげるわ」
「こっちのセリフだ」
ガシッと強くお互いの手を掴みあう。今日の所はこれで手打ちにしておいてやる。
「ってあんたなに燃えている方の手を出してるのよ⁉ 熱い熱い!」
「ハハッ! ばーかばーか! ざまあみやがれ! 俺だって火傷してるんだからお互い様だ!」
「ローネルー! 早く回復魔法ー!」
「はいはい。二人ともじっとしていてください」
ローネルに回復魔法をかけてもらい火傷も治ったところで。
「とりあえずあたしの考えを聞きなさい」
「どうせ大したことでもないだろうけど聞いてやるよ」
「態度がムカつくけどまあいいわ。この天才のあたしは、ある素晴らしいアイディアを思いついたわ」
「で、それはなんだよ?」
「ズバリ、マクロを組めばいいのよ!」
はあ? マクロだあ?
「あのう……まくろってなんですかあ?」
ローネルがおずおずと聞いてくる。わからなくても無理はないだろう。仕方ない。俺が教えてやるか。
「マクロってのはな、簡単に言うとインチキってことだ」
「そうね。あたしたちが楽をするためにやるズルのことね」
「は、はあ……。そうなんですか」
本当はもっと複雑な事なんだろうけど、実を言うと俺もよく知らん。でもマクロによる自動化は不正とか聞くし、インチキって認識ってことでいいだろう。エディカ本人は元ソシャゲ廃人だから詳しいんだろうが説明するのが面倒だという顔してるし。
「でもこの世界はゲームじゃないぜ? マクロを組もうにもそもそもどうやって組むんだよ。仮にできたとしてもあれ確か不正行為だろ? やった側にペナルティとかは無いのか?」
だいたいの場合、こういう自動化プログラムや不正ツールを使用していることが運営にばれるとアカウント停止などの重い処分が下される。これはまだましな方で、余りにも酷いと最悪アカウントそのものが削除されてしまうことがある。現実的に考えるならば前者は謹慎処分、後者は死刑である。
「あら、心配してくれるの」
「正直お前はどうでもいいが俺が巻き込まれるのならばできる限りリスクは犯したくない」
「あんたにもガッツリ関わってもらうけど大丈夫よ。マクロといってもあたし達が楽ができればいいだけだから」
「だからどうやって楽するんだよ」
「あんたは頭数に入ってないってことよ」
……?
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