空からマウム2


「わっ!ユラオラとミドルちゃんこっちこっち!

危ないよ!」

ゲンドロウ劇場がはじまった。

「ここはボクがなんとかくい止めるから、ミドルちゃんどっか電話して……!

警察かな……いや、NASAかな……」

ユラオラも観察していたが、すでに落ち着いていた。

「ゲンちゃん、そんなんじゃないみたいだよ」

「何?違う?」

「ほら、手を広げてるし」

「そうか、宇宙から友好にきたんだな」

ゲンドロウは必死に笑顔を作って、同じように手を広げる。

「地球人はアナタを歓迎しまーす」

ふたりは握手した。

「おおおおお!」

見物人からなごやかな歓声があがった。

「へへへ、ミドルちゃん

握手は宇宙共通のあいさつみたいだよ」

「ゲンちゃん、あのね……」

ミドルは言い出せずに優しい笑顔を返すだけ。

周りにもあきらかにイベントか何かの見せ物だと言う雰囲気になっていた。

未だに緊張の空気にいるのはゲンドロウだけだった。

“カチッ……”

シルバーの人物はヘルメットに手をかける。

「わっ!

こ、ここで脱ぐのか!

ま、まずいんじゃないの!

オレが全人類を代表していい訳?」

見物人もどんな顔が現れるか期待している。

「いいぞ!いいぞ!」

「はーい!」

若い元気な娘の顔が現れた。

“パチパチパチ……”

拍手に手をあげて答える娘。

「ありがとう、みなさん」

「えっ!えっ!ありがとうって何だこりゃ」

「ああ、面白かった」

「あのずんぐりのおじさん、名演技だったね」

「最初、ホントかと思ったよ」

納得して見物人が散らばって行った。


「なんだ余興かよー

脅かすなよ、おネエちゃん」

ゲンドロウはここでやっと置かれた現状に気付く。

「ユラオラ、人間だったよ。

しかも、ちょっとかわいいおネエちゃん」

ゲンドロウはおでこの汗を拭った。

「アンタがゲンドロウか、

よろしくたのむぜ」

「ええええーっ!

なんでオレの名を知ってるんだ!」

一度、冷静になったゲンドロウは、再びびっくりする」

「誰?

誰なの?」

それには答えず、娘はミドルに歩み寄る。

「先生!」

「やっと来たのね!」

「先生って、

ミドルちゃん、知り合いなの?」

「ママ!」

「ママこの人知ってるの?」

「うん、私の妹みたいなコなの」

「先生—!やっと会えたよ!」

マウムは嬉しそうに抱きついた。

「私も嬉しいわあ!」

「チームの連中、シャトルから容赦なく落とすんだもん」

「ごめんね、あのタイミングしかなかったのよ」

「でもうれしいなあ、やっと地上に戻れて」

「チーム?シャトル!なんで空からやってきたの?」

ゲンドロウとユラオラもさっぱり分からなかった。

「ゲンちゃん、紹介するわ」

「はいはーい!

自己紹介します。

ワタシは《美仁・マウム》よろしくね!

ゲンドロウ!ユーラ!オーラ!」

マウムは顔の横で手の平をひろげてあいさつした。


「よろしく、マウムねえちゃん」

「うん、可愛いねえ」

マウムは初めてとは思えないほど気さくにユラオラの頭を撫でた。

「ゲンドロウ、よろしくな。

これから一緒に暮らすんだから」

「ええええ!」

「なんか驚いてばかりだな、ゲンドロウは」

「だって、突然……」

「ユラオラもよろしくね!」

「マウムねえちゃんウチに来るの?」

「うん、ユラオラ、邪運化の話も聞かせてよ」

「うん、さっきもやっつけたし」

「じゃあ、帰ってから詳しくね」

「うん!」

「ちょっと、なんか勝手に話、進んでない?

ねえ、ミドルちゃん」

ゲンドロウはこの展開に付いて行けなかった。

「ゲンちゃん、話があるの。

実はマウムをウチに呼びたいんだけど……」

「話って、そこから入るの?

もう、ウチに来る前提だし」

「ゲンドロウ、今日の夕食、何作ってくれるの?」

「ほらね」

「ゲンドロウ、二階の東の部屋、空いてたよね。

ワタシの部屋でいいよね」

「あ……

しょ……

へ……

って、もう!

いいよ、いいよもう!

わかったよ!」

「ありがとう!

ゲンドロウ!」

マウムはゲンドロウにも抱きついた。

「うあっ!」

不器用なゲンドロウはその勢いに押されて、そのまま後ろ向きに倒れる。

“ゴン!”

地面にはマウムの脱いだヘルメットがあった。

「ああっ!ごめん、ゲンドロウ」

「いてててて……」

ゲンドロウは頭がフラフラ混乱していた。

ゲンドロウ達をあまりにも知ってるマウムと、マウムをあまりにも知らないゲンドロウとのギャップに……

邪運化はいつでもどこでも誰にでも悪さをしかけてくるし……

ユラオラはまだ特別なチカラを秘めたままだし……

空から突然のマウムが家族になるし……

マウムって誰?

ミドルとの関係は?


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あっくっく(本編)運はつながる 河野やし @yashipro

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