第30話 子どものチカラ3
誰かを感じる。
「誰どい!」
人間ではない妖気のある目つき。
底冷えのする現象の、手応えのある《誰か》が渦の中に入っている。
もはや自由に手足を動かせない。
「ワタイに何するんどい!」
「こあああああああああ!!!!」
吹雪の音のような、ささやく声のような音。
底冷えのする誰かは確実にクマさんの手を借りて、七地下神に向けてチカラを放った。
“すぱああああああ!!!”
あらゆる全ての抵抗もねじ伏せるような、磁場の渦が七地下神の前にできた。
“ぎゅるるるるるる!!!”
見た目には渦なのだが、空気の渦ではなく、レンズのように透明感があった。
それが七地下神に向かって行く。
“しゅるるるるるる!!!”
“ぐちゃっ!”
この強力な磁場の渦にただの操られ七地下神など無力だった。
“どがしゃわあああああん!!!”
「ケー、ケー、ジャッコ、ジャッコ、コッコー!!!」
“ぐりしゃわああああああん!!!”
操りの元もはげしく崩れ去った手応えがあった。
“ぐしゅるるるるるる!!!”
磁場の渦は突き刺さる。
「クエー、ジャッコ、ジャコ……」
いまわしい声は最後の抵抗を見せる。
“しゅうう売るうるるる……”
“ぐらったあああああん……!!!”
七地下神と共に亜空の門の前にたたきつけられる衝撃が民衆の全てに伝わった。
「やったか!」
「やったな!」
「やったど!うああ!」
クマさんは足場をはずされたようにススキの野に落ちる。
「クマさんこっちこっち」
遇佐絵門達の声。
“ぎゃしぎゃしぎゃし!!!”
「ま、待て、まだ終っとらんどい!」
クマさんは自分を守っていた何かの行方を見る。
磁場の渦は治まらず、さらに竜巻となって、舞い上がった。
“びゅうううう”
霜霧山盆地を見渡す位置まで上昇すると盆地を囲む山々に沿って一周した。
“しゅしゅしゅしゅしゅ……!!!”
山の粒状の鉱物を集めて石の粒の竜巻と化っした。
「あああ、竜巻じゃ」
「石のたつまきじゃああ!」
“どぐあああああああ……!!!”
石の竜巻は重低音を響かせ、一気に、七地下神に向かっていった。
“ぎゅごごごごごごご……!!!”
七地下神と亜空の門をまるごと包み込んで、圧縮して固めてしまった。
“ずうううううううん!!!”
一瞬に巨大な堅い石が出来上がった。
「おおおおおおおお……!!!」
「うあああああああ……!!!」
歓声とも悲鳴ともつかない声があがった。
“びふうううう……”
竜巻はムラサキ色に変わり、穏やかに巻きながらクマさんや遇佐絵門らのいる洞穴までやってきた。
“ふるるるるるる”
「うああ、巻き物が!」
ムラサキ色の竜巻は金平の持っていた巻き物をまきあげて、ふっと消えた。
“ささささ……”
枯れた草の上に転がった。
「おおお……」
「あああ……」
民衆から安堵の声が漏れる。
空は白い雲をとりもどし、生暖かい風が吹いてくる。
「おあああああ!!!終わったか」
民衆は目の前の超常現象に、顔をふせながら、体をこわばらせながら、泣きながら目撃していた。
『あっくっく、あっくっく、あっくっく……』
しかし、子ども達だけは叫び続けていた。
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