第23話 ボンバ邪運化3

クマさんは出口に手を伸ばす。

“ぼてっ”

“ゴロゴロゴロ……”

「う、うううう」

クマさんは草むらに転がった。

“ブヒッ”

カサブタが一声鳴く。

「ううううっ!

目がかすむ。どこだ?ここは。」

「ブヒブヒ」

静かな草むらでカサブタはちょっと離れてクマさんを見ている。

「おい、カサブタ、ここはどこどい」

「ブヒ!」

「ここはどこかと聞いとるんどい!」

クマさんはイライラして怒鳴った。

「ぶひーっ!」

“ささささ……”

カサブタは驚いて逃げて行った。

そしてすぐに草の間にはいって見えなくなった。

「おい、こら!待たんか!

行ってしもうたどい」

途方に暮れるクマさん。

“ぴーぴよぴよ”

遠くで鳥の鳴き声がする。

荒れたススキの草原には、いくつか枯れた木が突き出ている。

あちらこちらで草が踏み荒らされて、黒い土がむき出していた。

サビ臭い匂いがする。

ここは以前クマさんが住んでいた場所ではない。

しかし、懐かしい気がする。

「ここはどこどい……」

不安にかられるクマさん。

人の気配の感じられない草むらを歩いていると、こつっと足に当たる物がある。

土にまみれた堅い物。

よく見ると時代劇に出てくる侍の兜だった。

「何でこんなものが……

ん!」

周りをよく見ると、兜だけじゃなく、方々の草の中に鎧や旗が落ちている。

草から突き出ていたのは木ではなく、槍や刀だった。

「何事?嫌、何時代どい!ここは……」。

クマさんは異様な気配を感じる。

「嫌な予感がするどい」

“ぶるっ”

クマさんは震えた。




「ん!

あれは霜霧山か?」

その先に見覚えのある山。

“きょろきょろきょろ”

そしてめまぐるしく首を回して確かめる。

「ここは亜空の丘どいか……どうりで懐かしい気が……

ワタイは帰って来たんどいな」

確かに帰って来たが、元の時代ではないのをクマさんはまだ気付いていない。

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