あっくっく(本編)運はつながる
河野やし
第1話「あっくっく」のはじまり
“こあっく!こあっく!こあっく!”
“こあっく!こあっく!こあっく!”
だだっ広い宇宙で、やたらとにぎやかなカタマリが漂っていた。
ムラサキ色の何かのカタマリが……
“ここあ!かお、こあっかお!”
ありとあらゆる銀河の中で、自分達に適した惑星を探していた。
“こあっくくく……”
(あーあ、見つからない)
あきらめの境地にいた時、太陽を回る小さな惑星を見つけた。
それは地球と言う惑星。
しかし、住みつくには地球はまだ若かった。
地殻移動に気候変動、そんなのばっかし繰り返して、大気もあやふや。
“こあっく”
ムラサキ色のカタマリは地球にチカラの素をふた玉投げ込んだ。
“こあったー!”
彼らが投げ込んだふたつの玉は《あっくる玉》と呼ばれた。
“あっくる、あっくる……”
後は待つだけ……
彼らはもうひとまわり、銀河を回って、頃合いをみる。
銀河のひとまわりは何億年もかかる。
しかし宇宙的にみればちょうど手頃な時間だった
その何億年の間に太陽の光はあらゆる元素に合成し、青い海と緑の大地に豊富な栄養を蓄える。
その栄養をたっぷり吸収して生物がふんだんに育っていた。
“ぬごあ、ぬごあ”
骨を持つ者、持たぬ者、毛のある者、無い者がわいわい、わしわし、やっていた。
“じゃうん、じゃうん”
“どっし、どっし”
その中でも大型邪卵性生物がずば抜けた進化をとげていた。
地上はもちろん、空にも水中にも適材適所、あらゆる形に進化してひしめいている。
“じゃうん、じゃうん”
弱肉強食の食物連鎖の中で、強者を中心をする生物の生存構成のトップにいた。
元はと言えばあっくる玉のおかげ。
“あっくる、あっくる”
驚くべきあっくる玉の効果。
“じゃじゃうん、じゃじゃうん”
彼らの進化は止まらず、もっともっと、まだまだ進化したいと情熱にあふれていた。
そんな地球にゆっくりと近づいてくるムラサキ色のカタマリ。
彼らが再び戻ってきたのだ。
“こあっく!こあっく!”
地球の見事な成長にムラサキ色のカタマリのテンションが上がった。
“こあああああ!”
この時を待っていたとばかりに突入する。
“ポシュルルルルルルッルル……!!!”
地球の大気圏に入った時、空気との摩擦熱で大気が燃えた。
“ボオオオオオウウウウウウウ……!”
栄養を含んで群生していた巨大植物は炎上し、そのエキス油が景気よく燃える。
爆風が爆風を呼んで、地球表面に広がり続けた。
ぬくぬく天国から一気に灼熱の地獄の世界。
思いもよらぬ不運であっという間に生物は絶滅してしまったのだ。
しかし、地球上に何億年も君臨していた大型邪卵性生物だけはまだ生きていた。
肉体は消滅しても強い生存力のタマシイが残った。
“じゃうん、じゃうん”
不運にも滅ぼされた無念のタマシイは怨念のこもった邪悪なカタマリになった。
“じゃうんかー!じゃうんかー!”
邪悪な運を呪う《邪運生命ガスのカタマリ》だ。
実は地球外からやってきたムラサキ色のカタマリも同じ境遇だった。
遥か遠い昔、コアック星域に属していた惑星が消滅して、そこに住む生物が死滅してしまった。
しかし、強いタマシイをもったムラサキの知的生物は生き残った。
肉体は消滅しても強い生存力のタマシイとして……
純粋に運を受け入れる《コアック生命ガスのカタマリ》だ。
“こあっく!こあっく!こあっく!”
“じゃうんかー!じゃうんかー!”
地球外からやってきた生命ガスのカタマリと地球上の生命ガスのカタマリがぶつかる。
ふたつのカタマリがしつこく、やかましく、小競り合いを繰り返す。
邪悪な運と、純粋な運……
二つの《運》が複雑にねじれる。
“ぎゅるぎゅるぎゅる……”
初め小さかったねじれに加速がついた。
ねじれひねくれ、もうどうにでもなれとばかりにどんどんどん大きくなる。
“ぎゅうううううううううるるるるるるるるるる……!!!”
異次元の時空の
“ビリビリバルルルブシュウウウウ!!!”
時竜巻はすべての領域を支配する強烈な磁場で地球を巻き込んだ。
“こあっかあー!!!”
地球にかつてない規模の比重がかかる。
このままでは地球自体がメチャクチャになってしまう。
この事態を救ったのはあのあっくる玉だった。
“あっくる!”
“あっくる!”
“あっくっく!”
“ボガガがガガガガガガアアアアアアアアアンンンンン……!!!”
あっくる玉のチカラで、地球は現空界と亜空界というふたつの世界に分かれた。
次元の違うふたつの世界に……
驚くべきあっくる玉の効果……
“おええええええええええーーーーーーーーーーーーーーん”
それからさらに何億万年という年月が流れた。
現空界と亜空界の生物は独自の進化をとげていた。
現空界は《都市文明世界》
亜空界は《自然文明世界》
ふたつの世界には邪運生命ガスの副産物が人々に不運をもたらしていた。
悪さ
人々は邪運化によって不運な目にあっていた。
邪運化は見えにくい。
しかし人々が邪運化の存在に気付いた時、《運つながり》の物語がはじまった。
あっくる玉に見守られながら……
“あっくる!”
“あっくる!”
“あっくっく!”
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