第7話 謎の鳥居
ガレキの上に建つ、異様な形の鳥居。
「父ちゃん、もういいかげんにしろよ!」
「あ、ああ
どうしたもんかのお」
クマさんはバツが悪い。
「クマさん。やっぱり亜空石じゃったな、こりゃ」
歩平もしくじったと頭に手をやった。
「……ワタイの勘違いやったか」
崩れきった石のがれ場で、クマさんも自分の行動を少し反省している。
「クマさんは昔からセッカチやからねい」
ミツさんも呆れている
「ゲンドロウ、石は勘違いかも知れんが、ワタイはな、何者かに人生を狂わされたような気がしてしょうがないんどい」
「自分の不運を人のせいにするから、いつもイライラして気が晴れないんだよ!」
「でも、思い通りにならない人生って辛いよね、クマ父ちゃん」
ミドルは年寄りの気持ちに寄り添う。
「ねえ、ホージー、この鳥居、どうしてこんな輪がついているの?」
ユーラが素朴な疑問をぶつけた。
「うーん、わからんなあ」
「なんで石の中に入っていたのかなあ……」
「この特殊な形からして、石で封印したとも言えるな」
「封印って穏やかじゃないぞぉ」
ゲンドロウがまた心配しだした。
「ううう、ぬぬぬぬぬ……」
“ブーン、ブーン”
いつの間にかクマさんにしか見えないハエがたかっていた。
「このお!このお!」
クマさんはタタッ剣をとりだして追っ払っている。
「また始まったよ、幻のハエが……」
「おわっ!ユラオラ!オマイ達の横にもおるどい!」
「うあああ、」
逃げるユーラとオーラ。
「こら、ユラオラ!父ちゃんに合わせて見えてるような仕草をしなくてもいいだぞ!」
ゲンドロウがユーラとオーラを止めようとする。
「見えてるよ、ゲンちゃん」
「えっ?」
「ブタもいるし」
「本当どい!本当どい!こないだのブタどい!」
先日の笠をかぶったブタをユーラとオーラは追いかける。
「ハエだの、ブタだの、いねえだろ!
ねえ、ミドルちゃん」
「うん、ワタシにも見えない」
どうやらハエもブタもクマさんとユーラとオーラにしか見えないらしい。
「あーん、もうイライラするどい!」
“びしゅっ!ばしゅっ”
クマさんはハエでもブタでもどうでもよくなり、叩き回った。
「ブヒー!」
クマさんにぶたれてブタは悲鳴を上げる。
“ふつっ……”
そしてクマさんとユーラとオーラの前からいなくなった。
「ん?ブタがおらんようになったな」
“ヒュウー”
一瞬、クマさんは意識が飛んだように感じた。
「おろっ?
なんかおかしな気分やな。
何だこの空気は」
クマさんは不思議な空気を感じ取る。
“ぶううん……”
耳鳴りのような低周波音がする。
「やけに静かどいな」
クマさんが見回すとゲンドロウ達が止まったまま、動かない。
「おい、ゲンドロウ、ミドル!」
ゲンドロウとミドルは動かない。
歩平も頭に手をやったまま、固まっている。
「ミツ!」
シュロの木につかまったまま、ミツさんも静止している。
「どいつもこいつも固まって、どうしたもんどい」
「じっじん!」
「おわっ!ユラオラ!」
“ぶうううううううん……!”
低周波音は鳥居からだった。
鳥居の柱と柱の間の輪っかの中に磁気の波紋ができて、うなっていた。
その輪っかの中にユーラとオーラが吸い込まれそうになっている。
「ユラオラ!」
“ぐいいいっ……”
クマさんは夢中でユーラとオーラの手を掴む。
“グルルルルルル……”
「じっじーん!」
ユーラとオーラの体の半分が磁気の波紋の渦の中に消えている。
「こんぬおおおー!」
クマさんはユーラとオーラを引き出そうとするが逆に渦のエネルギーの中に引き込まれそうになる。
「待て待て待てこら!」
クマさんはユーラとオーラの手を離さない。
“シュロロロロロロロロ……!”
「うあああああああ!!!」
ユーラとオーラとクマさんはそのまま渦の中へはいった。
「……あ……ユラオラ」
ゲンドロウとミドル、そして歩平とミツさんはそれを目の当たりにした。
「ううううう……ユラオラ……」
しかし、体が金縛りにあって、どうしようもなかった。
やがて渦のエネルギーが消えて低周波音もしなくなる。
“ばっ!”
やっと縛りが解ける。
「ユーラ!
オーラ!」
ゲンドロウとミドルは叫んだ。
「何があった?ゲンドロウ」
「ゲンちゃん、クマさんとユーラとオーラはどうしたんだい?」
「知らねえよ、母ちゃん。
ユーラ!オーラ!」
ゲンドロウは雑木林をかき分け、探し始めた。
「ゲンちゃん、これ見て!」
ミドルは鳥居の異常に気がつく。
“ピキピキピキ……”
“ドックワアアアアン!!!“
鳥居は何かにはじかれたように吹っ飛んでしまう。
「うああああああ!」
衝撃でゲンドロウ達も草に転がる。
“ワアアアアアンンン……”
鳥居は空中でばらばらに砕けながら霜霧山盆地中に散らばって行った。
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