第39話 牧場での対決3
ユラオラはミドルに助けを求める。
「ユラオラ!大丈夫よ」
ミドルはユラオラの前に立ちふさがって構える。
邪運化の気配を探るしかない。
“ドドドド……”
邪運化はかばうミドルを払いのけ、ユラオラにまともに当たってくる。
「うあああ!」
“ドン!ドガッタン”
ユラオラは一回目はかろうじてよけたので、牛邪運化は店のビールケースにぶち当たった。
周りの人々は突然ビールケースが倒れたので突風が吹いたものと勘違いしている。
「ウンモー!今度は外さないぞ」
牛邪運は立ち上がって、足を地面にずりずりして構える。
「ユラオラ!」
ミドルはふたりの名を呼ぶだけで何もできない。
ユラオラの大ピンチ。
ユラオラの横にさきほどゲンドロウが倒したテントに付いていた店の赤い横断幕がチラチラしている。
「モオオオオオ!!!」
牛邪運化がいっそう勢いづく。
「赤いものヒラヒラさせるとオレはコーフンするんだモー!」
「ママ!やばいよ、牛邪運化が赤いものを見て起こってる」
ミドルにある作戦が浮かんだ。
「それよ!」
ミドルは赤い横断幕をとって、自分の体の前にヒラヒラと揺らした。
「オレッ!いらっしゃい!」
「ママ!闘牛士みたい」
“クイッ、クイッ”
人差し指でこっちにこいと、見えづらい邪運化を盛んに挑発している。
「ママ、かっこいい!」
「ンモー、闘牛だと?ようし、ノッてやろうじゃねえかモー」
牛邪運化にも気合いがはいった。
「モオオオオオ」
“カチャ、ガッチン”
牛邪運化は頭の角をはずし、特大の角に差し替えた。
「戦闘アタッチメントに替えてやったぞ!」
猛烈に突っ込んでくる牛邪運化。
“ドドドド……”
「ユラオラ!ワタシに邪運化の動きを教えてね」
「ちょっと右だよ!」
“スパッ”
邪運化の突進にミドルは巧みな布さばきで避ける。
“ドドドン”
「今度は左だよ!」
「オッケー」
これも間一髪のタイミングで交わした。
ドッシャーン!
邪運化はしたたかに壁にぶつかる。
「ママもう一度来るよ!」
ユラオラが示すとミドルの目がすわってきた。
「わかったわ、敵のパターンが……」
ミドルは赤い布をポイっと捨てる。
首をまわし、ゆっくり指をぽきぽき鳴らしながら目をつぶって構えた。
“ドドドドドド……”
「ママ!来たよ!」
「わかったわ、ここね!」
突進してきた牛邪運化の眉間にミドルが強烈な蹴りを打ち込む。
“ドガッ”
姿は見えないがあきらかに手応えはあった。
牛邪運化はパンクしていなくなった。
「やった!やった!」
ユラオラは万歳して喜ぶ。
ミドルは緊張から解放されてホッと息をはいた。
そしてゲンドロウがやっと目を覚ます。
「えっ!終わったのかい?ミドルちゃんがやっつけた?」
「まあね、ゲンちゃんが最初守ってくれたからなのよ」
ミドルはゲンドロウを持ち上げた。
「そ、そうかあ。
でも悔しいねボクが体調よければ……」
「へへへへ……」
「ハハハハ……」
霜霧山の中腹にある高原の牧場。
ここの牧場にはたくさんの牛がいる。
天気のいい日曜日は何事もない風景を取り戻した。
ひとつの事件を解決したゲンドロウ一家。
芝生に転がり、ソフトクリームを食べている。
活躍の主役だったミドルはなんともいえない達成感にひたっていた。
「やっぱりワタシは戦いに戻りたい……」
ひとりつぶやく。
ミドルにはゲンドロウと出会う前、栄光の戦いの日々があった。
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