第38話 牧場での対決2

“わいわいわいわい……”

にぎわう売店広場。

「フードコートになっているのね」

トウモロコシ、ソフトクリーム、だんご、ラーメン、やきそばなどが並んでいる。

客は買ったものを中央のベンチに腰掛けて食べている。

「ユラオラ、見えるかい?」

「ゲンちゃん、そんな目つきで構えていたらちょっと怪しいよ」

ミドルはイスに座って見物する。

「居るはずだけどね」

ユーラとオーラは広場の中を見渡す。

「いた!あそこだよ!牛に似た邪運化」

「ウッシシ……」

牛に似た邪運化は広場の人達に次々に悪さしてまわる。

「あそこに居る若いグループのお尻を突いたり、足をひっかけて倒したりしているよ」

「きゃっ!」

「なに?」

「うあっ!」

「いてっ!」

見えない人には被害が連鎖しているように見える。

びっくりして飛び跳ねたり、起こったり。

「なんか騒ぎが大きくなりだしたわね」

「牛邪運化が大笑いしてるよ」

「あのソフトクリーム食べてる人、危ない」

「ウッシシ、ほら身体につけてやる」

“べちゃ”

「わっ!なんだよ」

「ウッシシシ……」

杖をはずされて転ぶ老人。

脚がもつれて転ぶ子ども。

別な相手に手をつながされてもめるカップル。

普通の人には邪運化は見えにくい。

人々は相次ぐトラブルに混乱している。

「誰だよ!さっきから」

「オレじゃないよ!」

「今日は運が悪いなあ」

とつぶやいている。

油断している人間は気付かないが、気をつけてじっと見つめると気付く場合がある。

ミドルはじっと目を凝らす。

「ワタシもかすかだけど見えるわ」

「えっ?ミドルちゃん見えるの?どこどこ?」

ゲンドロウが騒ぐ。

「うーん、見えるというより感じるって言ったほうが正しいかしら」

ミドルにある作戦が浮かんだ。

「ユラオラははっきり見えるわよね」

「うん、見える」

「じゃあ、邪運化にユラオラを気付かせてやりなさい」

ミドルは親指を立ててウインクしている。

「こらー!牛、みたいな邪運化!悪さするなー」

ユーラが大声で叫んだ。


牛みたいな邪運化はキョトンとして声の主であるユーラを見た。

「もしかしてオレの事かモー?」

「そうだ!おまえだ」

「オレの事がわかるのかモー」

「わかったに決まってるー!」

オーラが大声で叫んだ。

オーラの決め台詞だ。

「ンモー、そうか、オレがわかるならおもしろいモー」

“ドドドド……”

牛邪運化はユーラとオーラに突進してきた。

「うあ!こっちにやってきた」

“タタッター”

ユラオラはあわてて逃げる。

「ママ!追いかけてきたよ」

「オッケー、こっちに引きつけるわ!」

ミドルは見えづらい敵に対して、冷静に考えている。

「ヘイ!邪運化、こっちよ!」

「ちょっと待った!ミドルちゃん。

ボクがやる」

ゲンドロウはミドルの前に立ち、両手をバタバタ降る。

「ダメダメ!余計だよゲンちゃん!」

「家族はボクが守る!」

ゲンドロウは全く相手が見えないし、感じてもいないので、見当違いのところを向いている。

“ドカッ”

「いてっ!」

“ピュー”

邪運化にどつかれて空中に舞い上がった。

「あっ!ゲンちゃん」

落ちてきたところが店のテントだったのでダメージはなかった。

「うあ!ゲンちゃんがやられた!」

ゲンドロウは目を回して動けない。

「ウウウウ……

家族はボクが……」

「ママー!助けて!」

「あおったから怒らしちゃたみたいね」

牛邪運化は今度はユラオラに向かって角を向けて突進してきた。

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