第33話 戦士ウリ・グウマ2

亜空界に来た頃は只の気の短い老人だったが、マクラウリの罠にはまり、危うく難をのがれたが、皮膚組織が入れ替わってウリのようにのっぺらな顔になってしまった。

「拙者らにどうぞ恩返しさせてくだされ」

「何か拙者らに出来る事はありませぬか」

「それではお願いがあるんどいが……!」

戦国の世で七地下神を石に閉じ込めた後、クマさんは侍に剣術の修行を申し入れた。

邪運化と戦うために、どうしても実戦的な剣術の技が必要と考えたからだ。

侍はクマさんの決意を知って、戦いに勝つ為の総合武術を初歩から叩き込む方針を決めた。

《クマ殿剣術指南道場》を立ち上げ、《天狗侍》と呼ばれる剣術、槍術、弓術、十手術、手裏剣術の各分野の達人が、己の全ての戦いの知識と技術を徹底的に叩き込んだ。

昼でも夜でも、春夏秋冬、暑かろうが、寒かろうが。

どのくらいの年数が流れたかわからない。

しかし、図抜け人のクマさんは過酷な修行に耐え抜いた。

ウリの顔と体には無数の傷がスジとして残った。

道場の壁や床は修行の血と汗がしみ込んだ。

時期が来て、道場に勢揃いした五人の天狗侍達。

「よく、辛抱されたな」

「クマ殿、拙者らにはオヌシに教えるものはもう何もござらん」

「クマ殿はもう、拙者らをはるかに越えてしまった」

天狗侍達から免許皆伝ともとれる言葉を聞いた時、クマさんには戦士としての自覚が宿っていた。

「クマ殿、オヌシは六人目の天狗でござる。

これを受け取ってくだされ」

それは新たに書かれた木の名札だった。

プロジェクトの天狗侍大将からクマさんは名前をもらった。

そこには天狗侍の証の文字がはいっていた。

「ワタイの願いを聞いてくれてありがとな、皆さん方」

クマさんは深く頭をさげて、新しい名札を達人達の並ぶ名札の横にかけた。

「ブヒ!」

そこにあのカサブタが現れたのだった。

“ぱかっ”

カサブタはまるでこの時を待っていたかのようにクマさんの前で時空のフタを開けた。

「クマさーん、修行は終わりどいか!」

「行ってしまうんじゃな」

常にクマさんの傍らにいて励ましてくれた遇佐絵門と金平がやってきた。

「遇さん、金平どん、世話になったな。

ワタイはアンタらを忘れんどい!」

「ブヒッ!」

こうやってクマさんは再び亜空界に戻って来たのだった。

「現空界で何年も過ごしたとに亜空界はたいして変わっとらんな。

戻って来て、この因縁の邪運化を倒す事になるとは、なんという亜空の不思議どいのお」

パンクしたボンバ邪運化の跡にはカスのようなものがコロコロ転がっていた。

“がしっ”

カスを踏みつぶしながらクマさんは亜空界での決意を新たにした。

「邪運化を倒すのがワタイの使命じゃー!」

とつぶやき、そして大きく叫ぶ。

「ワタイは邪運化を倒す戦士ウリ・グウマじゃどいー!」

叫んだ言葉は亜空の空に響き渡った。

と同時に戦士ウリ・グウマの頭からはもやもやの念のエネルギーが沸き出す。

かつてハエと呼んでいた念のエネルギーが。

亜空の戦士となったグウマだが、まだ感情をうまくコントロールできていない。


戦士グウマは常にあっくる玉によって守られていた。

グウマもそれは充分感じていた。

「ユーラ、オーラありがとなー」



現空界にいるユーラとオーラは元気に学校から帰ってくる。

「ただいまー」

「おかえり!

もうすぐ、ミドルちゃんも帰るからね。」

ゲンドロウが夕飯の準備をして待っていた。

ゲンドロウは家族の幸せな顔を見るのを一番の喜びとしている。

そんな平和な家族に激動の展開が待ち伏せていた。

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