第24話 先祖との出会い1

ここは周りを山に囲まれたススキの草原。

薄暗くてわかりにくいが霜霧山盆地らしい。

その真ん中の小高い丘。

「ここは亜空の丘じゃなかか?

てっぺんにはシュロの木もあるし」

亜空の丘ではあるが、ソバ畑は荒れたススキの野っぱらに替わっていた。

「何があったんどい、ここで」

「あそこにあるのは亜空神社か?

ボロボロやなかか」

「ワタイの家は……」

クマさんは家があるはずの場所に行ってみる。

「家がないどい」

「ミツー!」

「ゲンドロウーっ!」クマさんは呼んでみた。

“びゅううううう!!!”

生暖かい風が巻くだけ。

空はどんより曇って、小さな稲光があちこちで起こっていた。

「矢の刺さった戸の板が並んでおるだけどい。

うん?矢がなんで刺さっとるんどい」

“びゅん!”

“びしっ!”

その時、クマさんの頬をかすめて板に刺さった。

「おあっ!」

矢は殺気をはらんでいた。

「誰どい!危なかろうが」

クマさんは威勢よく大声でどなったが、それとは裏腹に腰が抜けていた。

“びゅん!びゅん!びゅん!びゅん!……”

矢は止めどなく飛んでくる。

「ひぇー!」

クマさんは無茶苦茶な動きでかろうじてよけるが、体はかすり傷だらけになってしまう。

「あぶない!こっちゃ来い!」

そんなクマさんの窮地を救いにある人物がやってきた。

クマさんの奥襟を掴み、押さえつけながら無理矢理ひっぱる。

「痛い、こら」

てぬぐいで頬被りをしていて顔は見えない。

「付いて来い!」

亜空の丘の下に溝が掘られている。

男は身を屈めてクマさんと溝を走る。

連れ込まれた場所は石をくり抜いて、住処にした洞窟だった。

入り口にムシロが掛けてある。

「こっち、こっち。早く!」

ムシロの隙間から手が招いている。

洞窟の中は暗く、菜種油を燃やした炎が黄色く揺らいでいた。

しかし奥までは見えない。

「ここなら安全どい」

クマさんを救った人物は、しゃべり方がクマさんとそっくりだった。



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