第3話 家族(ファミリー)
ゲンドロウがミドルを連れてきてから話を一気にはしょって十年語。
流れとして当然、ミドルとゲンドロウは結婚していた。
心も体もダイナミックなラテンの国からやってきたミドル。
閉ざされた盆地の素朴な青年、ゲンドロウ。
ふたりに可愛い子どもが生まれていた。
《ユーラ》と《オーラ》
ユーラは恐れを知らない好奇心ばりばりの女の子。
結果なんか気にしない。
思ったまんまに、疑いもせず動きまわる。
格好は髪の毛を左右に分けてダンゴにしている。
オーラは、思い込んだらまっしぐらの男の子。
飲み込みが早く、目的を与えると、一途に取り込む。
後頭部にゲンドロウと同じようにくせ毛が立っている。
ゲンドロウ一家はクマさんとミツさんの家から少し離れた町に住んでいる。
要領が悪くて、こだわりの強いゲンドロウは一人で便利屋をしていた。
屋号は《やったがゲンちゃん》
ほとんど年寄り相手なので、儲けは大してない。
家事の合間に仕事しているのが実態。
ミドルは霜霧山町の町の中で小さな生活物件アドバイズ業をしている。
土地問題や、生活問題をズバッと解決する。
《ミドルズジムショ》の看板は地域に溶け込んでいた。
ミドルはこの土地と素朴な人々が好きだった。
ゲンドロウは要領は悪いが、妻を愛し、子どもを愛している。
家族の為ならどんな犠牲を惜しまない。
だけどだけど、その思いが強すぎて、余計なお世話に落ち入りがち。
《家族を守る》がゲンドロウの信念だからしょうがない。
ミドルはそんなゲンドロウもひっくるめて家族を大きな気持ちで包んでいる。
賢いミドルは《縛らない子育て》でユーラとオーラは無垢な子どもに育っていた。
いまだに亜空の丘に住むクマさんとミツさん。
クマさんはこの十年で更にヨボヨボになり、いら立つ日々を送っていた。
そして相変わらず、現実とも幻覚とも区別のつかない感覚に悩んでいる。
ミツさんは相変わらずソバ作りをしている。
ミツさんの作ったソバは誰もがトリコになる
それは人間だけでなく……
人間でない者まで。
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