第20話 マクラウリの夢3

「くはあああああっ!!!」

マクラウリのベッドから体を起こそうとするクマさん。

「んんんなんどい!こらあ!」

“おがおがオが……!!!”

起き上がったクマさんには食肉植物マクラウリの細かい溶かしツルがからんでいた。

クマさんはしつっこいツルをはがそうとする。

“ぐぐぐぐぐ……”

「離れろ、こらあ!」

“べりべりべりべり”

「なんちゅう粘着どい!」

強引にツルを剝がすとツルの内側からゼリー状の液がこぼれた。

マクラウリのツルはクマさんの身体の表面をすでに溶かしはじめていた。

“べりべりべりべり”

「ひぇっ!ひぇっ!ひぇっ!」

必死で体中のツルを全て引き剥がした。

「はあ、はあ、はあ」

その場にへたり込んでそっと身体を触るクマさん。

「こ、こりゃまるで、ムキ卵みたいどい!」

クマさんはシワも髪の毛もとれて、ツルツルになっていた。

食肉植物、マクラウリの溶かしツルによって、クマさんの表面の組織が溶かされたのだった。

古い組織が溶かされ、後に残っているのは若い組織。

結果として、クマさんは若返っていた。

「ふははは!

ラッキーどい!」

クマさんの足取りが軽くなった。

「ふうう、あぶなかったどい。あっくる玉にまた救われたどい」

クマさんはあっくる玉を愛おしそうに撫でる。

そして真実を知り、嘆いてばかりいた自分を改めて見つめる。

「ワタイの人生はあの邪運化のために壊されたんどいな」

マクラウリの不思議な夢のおかげで自分の人生を狂わせた原因がわかった。

「真の敵は邪運化やったか!」

亜空界で体が若く生まれ変わった。

しかし、今までの人生よりも危険で困難な戦いが待ち構えていた。



---現空界、ゲンドロウの家

「ユラオラ!」

「ユラオラ!起きて!」

現空界ではゲンドロウとミドルがユラオラを揺り動かしている。

「はっ!」

ようやくユラオラが目を覚ます。

「じっじん!」

「じっじんがどうした?」

「ゲンちゃん!じっじんの夢をみたんだよ!」

「ボクも!」

ゲンドロウとミドルは夜中、ユーラとオーラがはげしくうなされているので心配して起こしたのだった。

「じっじんがウリの中で夢をみてユーラ達も一緒につきあったの」

「若い頃じっじんはトンネルを掘っていたんだよ」

「お見合いでばっばんと知り合って結婚してゲンちゃんが生まれたの」

「じっじんって、ずっと邪運化に邪魔されていたんだよ」

「はん?

ユラオラ、何がなんだかぜんぜんわかんないよ。

へへへ、さすが夢だな」

ゲンドロウはまったく理解できない。

「クマ父ちゃんと夢で会ったのね。

ユラオラの特別なチカラがそうさせたのね。

クマ父ちゃん嬉しかっただろうなあ」

「うん、喜んでた」

「すごいリアルで面白かったよ」

「そう、良かったわね。

まだ早いからもうちょっと寝てなさい」

ユラオラに布団をかけて、ミドルは独自の解釈でまとめる。

「ゲンちゃん、クマさんとユラオラは別々の世界にいながら、何かでつながっているのかもよ」

「そんなもんかなあ」

「ねえ、導きの実って何?」

ユーラがいきなり尋ねた。

「ちょ、ちょっとユーラ、なんでそれ知ってんだ?」

「だって夢の中でじっじんが言ってたもん」

「ボクとミドルちゃんも導きの実で知り合ったんだぞ!」

これは誰にも言っていないエピソードだった。

「ゲンちゃん、だから何かあるって!」

「今度見せてよ!」

「なくしちゃったんだよ、知り合ってすぐ」

「クマ父ちゃんの活躍を願いながらみんなで寝ましょ」

ゲンドロウ一家はひとつの部屋に布団を敷いて眠る。

間もなくみんなの寝息が聞こえた。

眠れないのが心配性のゲンドロウだった。

「なんでみんなぐっすり眠れるんだよー」

愛する家族を守るのは自分だと、決意も新たなゲンドロウだった。

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