我が名はモケモフ。

なにやら様子がおかしくはないか。

人は人ではないが、人だった。

新しき小屋へ移されたのではないか。

ご主人の用意されし、私の場所はどこにある。

とりあえず、話し合いをせねばなるまい。

我が住まいとなるのだろう？

ご主人は、ご主人だ。

目覚めれば、ここに。

ご主人はなぜ、私をここに配したのかーー？

私は、メスだが？

動きやすくなるのならば、助かる。

私は、リボンのバケモノのようになっていた。

私は夜行性なのだが、眠たくも眩しくもない。

私はミャイに引かれるまま、階下へ行った。

相伴にあずかるのが、楽しみだ。

ミャイは、働いているのか

どのような仕事があるのかを知って、考えてみるとしよう。

そういうものだと受け止めるよりほか、あるまい。

ご注文は、何にいたしましょう

クルミ割り師？

クルミを割ることが、仕事になるのか

割ってみようと思ってな

漏れ出でるクルミの香りもたまらない。

その仕事で支払おう

モケモフさんは、道具を使わずに殻を割るんだ

これこそ私がこのケージに移された理由なのではないかと思う。

ならば、私に仕事を回してもらえるか

気遣い、いたみいる

他者に迷惑をかけては、仕事とは言えぬからな

それで、請け負おう

住所を聞いてもわからないし、地図を見てもよくわからない。

歯ごたえはまったくないが、味は好みだ。

「私は、もともと夜行性だ」

しばらく待つのがおいしくなるコツだ。

「煮出し汁は、だれでもできるだろう」

「本題に、そろそろ入ろうか」

「……継ぎ目がわからぬな」

　ミャイはもげるかと思うほど、首を激しく横に振った。

「ここに、赤いシミがあるわ」

「あの、私……、行きませんよ」

「報酬として、この地図と鍵をもらう」

　無駄なことで悩み続けないのは、いいことだ。

私は片頬だけを、ニヤリと持ち上げた。

「あの家が、宝物のある場所なのね」

ミャイは板に爪痕をつけた。

「すべてを割る必要は、ないだろう」

古い木の匂いに体を包まれて顔をしかめると、

前足を奥に向けて示すミャイは、二階に上がる気満々だった。

私はべつだん得意にもならなかった。