私は、リボンのバケモノのようになっていた。
「できたっ」
大きな声に、私はハッと目を開けた。どうやら、すっかり眠っていたらしい。体が丸くなっている。
ムクリと身を起こすと、足のまわりの毛がスッキリとしていた。そのまま立って、そのあたりをウロウロしてみる。
「どう?」
ミャイが得意そうに聞いてきた。
「うむ。動きやすいな」
「でしょう? それに、すっごく可愛いんだから」
ほらほらと、ミャイが姿見の前に私を連れて行く。
鏡を見て、私は絶句した。
「可愛いでしょー?」
ほめられることを、わずかも疑っていないミャイの声を聞きながら、どう返すべきか悩む。
私は、リボンのバケモノのようになっていた。
上の毛は、下に向けて左右それぞれに、上から青、緑、黄色という順番で、リボンで止められている。後ろ足の毛は、上に向けて編み上げられていた。こうして見るだけで、左右あわせて6つも、リボンがついている。……背中には、リボンがあるのだろうか。
「ミャイ」
「なあに?」
はやくほめてくれと言わんばかりに、ミャイがうかれた顔をする。
「私の背中には、どのくらいリボンが、ついているのだろうか」
「背中? 左右にわけて編んだから、見えているだけよ。つけたほうがよかった?」
私はすぐさま、首を振った。
「いや、これでいい。あまりついていると、重くてかなわないからな」
「そっか。そうよね。いままで、リボンとかつけたことがなかったら、そうかも。……いまのは、どう? 重いかな」
「次は、リボンの色を、統一してもらえると助かる」
鏡を見ながら言えば、ミャイが顔をくもらせた。
「そんなにたくさん、おなじ色のリボンを持っていないから。……ごめんね」
ハッとする。
私はなんと、失礼なことを言ったのだろう。
「すまない、ミャイ。私の住まいが定まるまで、世話になるというのに」
「ううん。……ねえ、モケモフ」
「なんだ」
「これからも、あるリボンで結んでも、いいわよね」
ひかえめに、上目遣いに見てくるミャイの目の奥が、なにやら小ずるく光っている気がしないでもないが、拒否ができる立場ではない。
「……ああ。たのむ」
「やったぁ!」
飛びはねるミャイを見ながら、私はわずかな不安を確信に変えた。
きっとこれからも、とりどりのリボンで彩られることだろう……、ああ。
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