私は夜行性なのだが、眠たくも眩しくもない。

「せっかく、かわいくなったんだから、どこかへ出かけましょう」

 ミャイが提案をしてくる。私は窓の外を見た。明るい光が差し込んでくる。本来、私は夜行性なのだが、眠たくもまぶしくもない。

 いったい、どういうことだろう。

「町のどこに、なにがあるのかを知っておいたほうが、いいと思うの」

「ふむ」

 それもそうだ。

「では、案内を頼もうか」

「まかせといて」

 ミャイは胸をそらしながら、トンと叩いた。

「まずは、どこに行こうかなぁ。……モケモフさんは、どこか行きたいところ、ある?」

 そういわれても、ここになにがあるのかを、私は知らない。

「右も左もわからぬ場所だ。ミャイの思いつく、私に必要だと考えるところに、連れて行ってくれればよい」

「そっか。そうだよね。……それじゃあ、この界隈かいわいをとりあえず、案内しようかな。ウチと、その周辺。もうすぐ夕方になっちゃうから、あんまり遠くには行けないしね」

「遠く――? このケージは、それほど広いのか」

 広場からこの家に案内されている間、ずいぶんと広いケージだとは思った。しかし、この窓から差し込む光が暮れるほど、めぐるのに時間がかかるとは。

「ケージ?」

 きょとん、とミャイが首をかしげる。

「ケージって、なぁに?」

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