私はミャイに引かれるまま、階下へ行った。

 私も首をかしげる。ミャイは私が答えるのを待っていた。

「ケージを、知らぬのか」

 こくん、とミャイがうなずく。

 どういうことだ。

「ケージとは、この小屋のことだ」

「家のこと?」

「家ではない。家を含めた、小屋のことだ」

「よく、わかんない」

 あっけらかんと、ミャイは笑った。ケージがなにかは、どうでもいいらしい。

「それよりも、はやく行こう!」

 自分から質問をしておきながら、ミャイは私の前足を持って、階下へ行こうとする。

 収まりの悪い心地になりつつ、私はミャイに引かれるまま、階下へ行った。

「おかあさん、おとうさん。モケモフさんと、お散歩に行ってくる」

 階段を下りながら、ミャイが言う。私は慎重に、階段に足をかけた。どうも、この段差は立ったままでは、私の足と長さが合わぬ。ゆっくりと下りなければ、踏み外しそうだ。

 まてよ。

 ならばいっそのこと、飛びながら下りてしまえば、よいのではないか。

 私は軽く弾みながら、階段を下りた。このほうが立ったままだと下りやすい。ミャイが毛を編んでくれたおかげで、毛で足が滑ることもない。

 しかし、なぜ私は立ったまま、階段を下りているのだろう。ミャイもなぜ、4本足で動かず、2本足なのだろうか。そういえば、このケージに移動させられてから、見る獣のすべてが、2本足だった。

 そうか。

 そういうことか。

 あやつ等は、ハムスターという人種、と言っていた。このケージに住まうということは、人とおなじように振舞う、ということなのだろう。

 なるほど。

 だからグレィやミャイ、その両親なども服を着ているのか。

 これから、ここで生活をするにあたって、重要なことに気づけた。

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