新しき小屋へ移されたのではないか。

 私は天をあおいだ。

 これを、どう受け止めれば、よいのだろう。

 よもや、私は新しき小屋へ移されたのではないか。

 思い至った私は、あたらめて犬と名乗った者を見た。

「犬……、で、あったな」

 慎重に問えば、首肯された。

「私は、ハムスター。名は、モケモフという」

 ご主人が、この者らと私を共に住まわせると決めたのであれば、従うより他はない。なにせご主人は、私の生殺与奪の権限を有しているのだから。

 そういうことならば、仲良くするに、しくはない。

「これから、共に過ごすことになるようだな」

 犬らは、けげんな顔をした。ヒソヒソと耳打ちをしあう者もいる。ここは、私の知る匂いがしない。ゆえに、私が犬らの住まいに移されたのであろう。ならば、新参者をあやしむは必定。

 私は、犬らの戸惑いが落ち着くまで、待つことにした。

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