ご主人の用意されし、私の場所はどこにある。
「ここに住むって……、ええと、モケモフさん。どこかに、知り合いでもいるんですか」
茶色の短毛な犬が、戸惑いがちに問うテクる。私は首をかしげた。知り合いがいなくば、ならぬのだろうか。
「なわばりのことを、気にしておるのか」
ここでの新参者である私は、なわばりを持たぬ。いままでのなわばりは、ゲージという、四角く長い、トンネルが突き出たものだった。そこを示しても、いたしかたがなかろう。この者らが、ゲージのありかを知っているとは思えぬ。
「なわばり? ええと、家とか土地のことだな。……モケモフさんの、なわばりとなる知り合いは、どこの誰かね」
先ほどの犬より年かさらしい、灰褐色の毛並みをしている犬が言う。
「ここは、犬しかおらぬのか」
「ハムスターは、はじめて見た」
私とおなじ種は、いないと言いたいのか。つまり、犬のほかにも、なにかがいる、ということだな。
「私の知るものは、おそらくここにはいないだろう」
犬らが、ざわめく。
「だが、ご主人が私をここに入れたのならば、私のおさまるべき場所が、用意をされておるはず。それらしきものを、知らぬか」
犬らは困惑げな目を、向けてきた。
「ご主人……?」
そうだ、と私はうなずきで示した。
「ご主人とは、なんだい?」
予想外の質問に面食らう。犬らは、ご主人を知らぬのか……。
いや、そのようなことが、あるはずはない。
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