新しい生活

私は、メスだが?

 私の毛が、丁寧にブラッシングされている。私は目を細めて、ここちよく身をゆだねていた。

「おしりのほうの毛が、なんだか段々になっているのだけれど」

 遠慮がちに声をかけてきたのは、この家の主の娘。ミャイという名の三毛猫だ。私の肩ほどしか、体長のないミャイは床に這うようにして、私の足まわりの毛を梳いている。

「どうしても、からまりが取れない場合、ご主人が切ってしまうのだ」

「そうなんだ。……たしかに、からまると大変そう」

 足元の毛をいじりながら、ミャイが言う。

「動くときも、この長い毛はふわふわで、気持ちがいいけれど、からまりそう」

 ふうむと、ミャイが考えて、自分の耳にあるリボンに触れた。

「こういうふうに、長い毛をとめていられれば、いいんだけれど……。女の子みたいに、なっちゃうものね」

 私は振り向いた。

「私は、メスだが?」

「え」

 ミャイの目が、まんまるになる。そういえばご主人は、ハムスターは性別がわかりづらい、と言っていた。私の態度や口調が、オスに思われるようなものだったらしい。

「女の子……?」

「そうだ」

 私は、はっきりとうなずいた。

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