新しい生活
私は、メスだが?
私の毛が、丁寧にブラッシングされている。私は目を細めて、ここちよく身をゆだねていた。
「おしりのほうの毛が、なんだか段々になっているのだけれど」
遠慮がちに声をかけてきたのは、この家の主の娘。ミャイという名の三毛猫だ。私の肩ほどしか、体長のないミャイは床に這うようにして、私の足まわりの毛を梳いている。
「どうしても、からまりが取れない場合、ご主人が切ってしまうのだ」
「そうなんだ。……たしかに、からまると大変そう」
足元の毛をいじりながら、ミャイが言う。
「動くときも、この長い毛はふわふわで、気持ちがいいけれど、からまりそう」
ふうむと、ミャイが考えて、自分の耳にあるリボンに触れた。
「こういうふうに、長い毛をとめていられれば、いいんだけれど……。女の子みたいに、なっちゃうものね」
私は振り向いた。
「私は、メスだが?」
「え」
ミャイの目が、まんまるになる。そういえばご主人は、ハムスターは性別がわかりづらい、と言っていた。私の態度や口調が、オスに思われるようなものだったらしい。
「女の子……?」
「そうだ」
私は、はっきりとうなずいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます