ミャイは、働いているのか
ミャイが目を丸くした。
「泊まるって……。モケモフさん、お金ないんでしょう」
「お金?」
「そうよ。お金」
お金なら、知っている。持っていないので、うなずいた。
「だったら、宿屋には泊まれないわ。だから、ウチがモケモフさんをあずかるって、決まったんじゃない」
あきれた調子で、しかし楽しそうな気配は消さずに、ミャイが腰に手を当てた。
「お金は、なんにでも必要よ。みんな、お金でやりとりをするんだから。働いて、お金をもらって、それでお買い物をするの。私のそのリボンだって、私が働いて買ったものなんだから」
私は自分の毛を結ぶリボンに、意識を向けた。
「ミャイは、働いているのか」
「働くっていうか。家の手伝い? けっこう楽しいのよ。モケモフさんも、ここで生活をするのなら、仕事を見つけなきゃいけないよね」
仕事というのは、用事のことだろう。ご主人はそれを、母親から手に入れて、それで私の食事や、小屋の改装品を購入していた。このケージの中では、人である獣同士が仕事を分担し、お金を交換して生活をしているのか。
なんとも不思議なケージだ。
ご主人はもしや、私の食事や小屋の備品などを、まかなえなくなってきたので、私自身を働かせる算段で、ここに私を移したのかもしれない。
いや、きっとそうだろう。
なるほど。
そうだとすれば、私はケージの中での小屋を、好きなようにしていい、ということか。大切に貯蓄していた、ひまわりの種を、掃除のたびに奪われることもなくなる。
悪くない。
「その、仕事。私にふさわしいものを、早く見つけたい。いつまでも、ミャイのところで世話になるわけには、いかぬからな」
ひまわりの種の山を想像しながら言えば、ミャイの顔がくもった。
「やっぱり、屋根裏だと不満?」
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