クルミを割ることが、仕事になるのか
「ミャイ」
「なあに?」
私はテーブルを見つめたまま、ミャイに問うた。
「クルミ割り師とは、なんだ」
「その名のとおり、クルミを割る仕事をしている人よ」
「クルミを割る仕事?」
「そう。うちは、そんなにたくさんクルミを使わないから、おとうさんが仕込みのときに、ちょっと割るだけでいいけど、ここみたいに沢山使うお店は、クルミを割る仕事の人がいるのよ。もちろん、クルミだけじゃなく、ほかの殻も割るんだけど。いちばん大変なのがクルミだから、クルミ割り師って呼ばれているの」
「……クルミ割り師の仕事は、それほど多いのか」
「クルミの料理を出す大きな食堂は、雇っているんじゃないかなぁ。たまに、力自慢の人が、自分の仕事のほかに、臨時雇いでそれをしてたりもするわ」
ふうむ。
「どうしたの?」
「クルミを割ることが、仕事になるのか」
「仕事にしないと。あんなに大変なこと、タダでやろうなんて人いないし、タダでしろって言う人でなしはいないわよ。まあ、家の手伝いとか、そういうのなら別だけど。家の料理で使う場合は、木の実屋に行くしね」
ミャイが軽く肩をすくめる。
「木の実屋。そんなところがあるのか」
「そうよ。気になるなら、明日連れて行こうか」
「ああ。頼む」
クルミ割り師、か。
その仕事のために、私はこのケージに移動させられたのではないだろうか。
そう思いつつ、提供されたピーナッツパイにかぶりつく。
それはとても美味で、思わずうっとりと目を細めてしまった。
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