「ここに、赤いシミがあるわ」
クルミの殻よりも、木箱はやわらかかった。
ミャイの期待の視線とミョミョルの緊張した目を感じながら、私はふだんよりも丁寧に仕事をつづけた。
歯先が空洞に触れる。そこから割り開き、私はそっと木箱を机に置いた。
ぱかりと開き、出てきたものに首をかしげる。
「紙……、と、鍵?」
ミャイがおそるおそる、紙を前足でつつく。ミョミョルが紙を手に取って広げた。
「これは、地図ですね」
木の絵や家の絵、川とおぼしき線などが、紙の上でうねっていた。
「間違いなく、地図ね」
うん、とミャイが紙を凝視し、あれっと言った。
「ここに、赤いシミがあるわ」
とん、とミャイが紙の上に置いた前足の先に、たしかにそれはあった。
「シミではなく、しるしではないでしょうか」
ミョミョルが首をかしげながら言う。
「しるし?」
「ええ。……この、鍵をつかう場所ということかもしれません」
「共に入っていたのだから、おそらくそうだろうな」
私は鍵を手に取った。くすんではいるが、もとは金色だったのだろう。取っ手の部分に、緑色の半円の石がはめこまれている。鍵の端には紐の切れ端がついていた。それはちぎれたのか、ちぎったのか、端がけば立っている。
「すごいわ!」
ミャイが目を輝かせた。
「ねえ。これきっと、宝の地図よ」
「宝の地図?」
「そうよ。きっとそう。ねえ、ミョミョルさんもそう思うでしょう」
「さあ」
ミョミョルがあいまいな顔をする。
「だれかの小屋かもしれませんよ」
「小屋の鍵と地図を、こんな木箱に入れておくなんて変よ。大切な宝の地図だから、こんな不思議な木箱に入れていたんだわ!」
ミャイはどうしても、宝の地図にしたいらしい。
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