それで、請け負おう
「こちらの報酬として、50レットを1個につき支払いましょう。クルミのほかの、殻のやわらかなものは30レット。それで、ひとまずやってみませんか」
それがどのくらいの価値なのかわからない。
私はミャイの父親を見た。
「妥当だな」
ならば私に否やがあろうはずはない。
「それで、請け負おう」
「ありがとうございます。ええと、それじゃあしばらくはウチに来てくれませんかね。いつくか割っておいてもらって、それを剝き木の実として店頭に並べます」
「注文を受けてから、割るんじゃないの?」
ミャイが首をかしげた。木の実屋が、ほがらかな顔になる。
「それじゃあ、モケモフさんが窮屈でしょう。まだこの町に慣れていないモケモフさんを、お嬢ちゃんは連れまわしたいんじゃあ、ないんですかねぇ」
ミャイが目をまん丸にした。
「見透かされていたな」
ミャイの父親が、やさしくミャイの頭に前足を乗せる。エヘヘと笑ったミャイが、私を見た。
「私もっと、モケモフさんと仲良くなりたいんだ」
「私もだ、ミャイ」
うなずくと、うれしそうにミャイが抱きついてきた。
「じゃあ、そういうことで。しばらくは通いで。慣れてきたら、モケモフさんとこちらのしやすいように、働き方を考えましょ」
「ああ。よろしくたのむ」
「よかったね、モケモフさん」
「ミャイたちのおかげだ」
「エヘヘ」
ミャイが私の毛に顔をうずめる。前足でミャイの短い毛を撫でながら、ミャイの父親と木の実屋に軽く頭を下げた。
このケージでの生活は、楽しくなりそうだ。
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