不思議な仕事
住所を聞いてもわからないし、地図を見てもよくわからない。
私の仕事は順調に進んだ。
順調だと思う。
比較対象がないのでわからないが、不自由はないので順調のはずだ。
「モケモフさん、もう終わる」
「ああ。これで最後だ」
私は木の実屋の仕事を開店前に終わらせると、ミャイの家に戻って先着限定で木の実割りの仕事を請け負っている。
ここでの家賃は夕方からの木の実割りで支払っているので、仕事で受け取るお金はすべて私の自由に使える。
ミャイのリボンは早々に買って渡した。ミャイはそれを気に入ったようで、ほぼ毎日、身につけてくれている。
私の毛は毎朝、ミャイがしばってくれている。リボンは自分で毛の色に合うように、地味な緑色のものを買った。ミャイはもっと、いろいろなものを買ってオシャレにすればいいと言うが、興味が湧かない。
「終わったぞ、ミャイ」
私は依頼ぶんの木の実を割り終え、袋に詰めた。
「それじゃ、届けに行こう」
出かけたくてしかたがないらしく、ミャイはソワソワとしている。依頼者はここに木の実を届けて、仕上がったものは私とミャイが持って行く。
急ぎの場合は取りに来てもらうのだが、だいたいが「夕食に使いたいから」という依頼なので、日が暮れるより前に届ければ問題がない。
依頼者はいろいろだ。
なので、届けに行く場所もいろいろとなる。
この広いケージに移って間もない私は、住所を聞いてもわからないし、地図を見てもよくわからない。
ミャイはそんな私を案内するのが、楽しいそうだ。
手伝ってもらっているので、お金を支払うと言えばいらないと言われた。
ミャイも働いているのだから、お金を受け取るのは当然だろう。
そうミャイの母親に言ったら、ミャイにオヤツを与えればどうかと言われた。
「それなら、大歓迎!」
ミャイは大喜びで、行ってみたい店をあれこれと並べはじめた。
そんな会話をした翌日から、個人依頼の品を届けた後に、その地域にある店でオヤツを食べる、あるいは土産として持ってかえることになった。
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