駅前第四ビルが愛した植樹

　第一章ルーツでは、私のために私のことだけを語ります。なぜ私は生まれたのか、誰に助けられて生きてきたのか、誰を愛したのか、誰から愛されたのか、私はおそらく、私を語れる唯一の存在であるのだから、私の知っている限りの私を語れば、それこそが私の物語になるのだろうと考えています。
　第二章わるぢえは思い出という報酬を貰った私が後悔と懐かしさを込めて書き殴ったお話です。「わるぢえ」とあだ名された今は亡き友人と、私が心のどこかで憧れてそれでもどうしようもなくて、たった一度しか会えなかった「子どもから回復できない女」について語ります。
　第三章駅前第四ビルが愛した植樹は、私の長女の話です。無力な父親が娘の短い人生を想像とフィクションで作り上げたつたない物語です。愛情とほんのわずかな希望を書かずにはいられず…続きを読む