第35話

―――――――――



「なあ、穣」



「ん?何でありますか?千草くん」





数年後の居酒屋の個室にて。




「寧々ちゃんのあの雑誌の切り取り、いつくれるんだ?」



「……あ、まだ諦めてなかったのでありますね。あげませんけど」



「ち」



「舌打ちしてもあげませんよ。というか、ここまできても大事にしてるんだから、あげるわけないでしょ。いい加減諦めてください」



「無理。あの雑誌、もう手に入んないから絶対貰う」



彼の目は本気だった。



穣は目の前のかっこいい俳優と久々に飲んでいるわけだが、彼が結婚しても相変わらず寧々ちゃん一筋で安堵した。



だが、しかし。



彼には前科がある。



――――…自分の部屋にあげた時に、勝手にstrawberryの4thシングルで中に入っていた応募券で応募した時に当たった寧々ちゃんのサイン入りポスターをくすねられそうになった前科が。




「今度、寧々ちゃんが実家に寄って家にいない日があるから、その日に穣の家に」



「絶対招待しませんよ」



「ち」







「旦那様は昔から変わりません」


出水穣は知らない


初めて桐鵺が穣の部屋を訪れた時

寧々のブロマイドを一枚、抜き取られていることを

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