第五話「旦那様は家事が大好きです」
第13話
「寧々、今日は俺にやらせて」
旦那はオフの日、必ず家事をやりたがる。
今日も物を干そうとしていた私に食事を終えた彼は洗濯カゴに手を伸ばしてきた。
「え、でも今日は折角のオフなんだから、桐鵺くん、ゆっくり休んだら?」
「オフだからだよ。普段、家事をしてくれてる寧々にちょっとでもお礼をしたいんだけど、こんなことしかしてあげられないから」
―――…なんっていい旦那だろう。
この前なんて知らぬ間に食器洗いをしてくれていたり、私が少しうたた寝をしている間に洗濯物を畳んでくれていたり、しまいにはお風呂掃除をしてくれたりして一年以上経った今でも驚きの日々を過ごしている。
ちょっとでもお礼をするのは私の台詞ではないだろうか。
「桐鵺くん、ありがとう。でも、無理しないでね」
「心配してくれてありがとう、寧々」
160センチしかない私の身長に合わせて体を屈ませて、ちゅっと軽くキスをしてくれた。
不意打ちでキスをされてしまい、手の甲で唇を隠す私の頬はきっと真っ赤だろう。くすくすと悪戯が成功したような笑みを浮かべている桐鵺くんに『もうっ』と溢すと、彼は私の頭を撫でてからベランダに出て行った。
―――…むう、何でもスマートにしてしまう彼に心臓が持たない。
何をしても余裕で、この前なんてセックスの最中に『可愛いね』と何度も何度も耳元で囁いてきた時なんて、私が真っ赤になって恥ずかしがっているのを楽しんでいるとしか思えなかった。
いつも先に果てて、後の処理も全てしてくれている彼に申し訳なささもあるけれど、正直恨めしかった。
……もう少し加減をしてくれたら、私だって動けるのに!
夜の営みに関してはもう少し改善が必要だと思いつつも、いつも気持ちよくて流されるままになってしまう。だって、桐鵺くん上手だもの。桐鵺くん以外とは誰ともしたことがないから比較対象はいないけど、本当に毎回気絶しちゃうくらい気持ちがいい。
昨夜のセックスを思い出してしまって、私は慌てて思考を止める。
朝から何考えてんの!自分!!
頭をフルフルと横に振っていると、ふっと頭上から笑い声が聞こえて、私ははっと目をあげる。そこにいたのは、私を優しい瞳で見下ろしている彼がいて。
「何考えてたの?寧々」
「あ」
「可愛いね」
ちゅっとまた私にキスを落とした。今度は軽いキスだけでは終わらず、唇を辿るように、時間をかける度に深くなっていった。
―――…彼はキス魔だ。
事あるごとにキスをしてこようとする。
出かける時はもちろん、帰ってきた時、食事をしている時、何気なくテレビを見ている時、お風呂に入る前、寝る前などなど。ああ、それとこの前は食事を作っていた時にキッチンに入ってきてまでキスをしてきた。流石に包丁を持っている時はダメだと咎めたけど『寧々が可愛かったから』と申し訳なさそうにされると何だか悪いことを言ってしまったような気分にさせられた。不思議だ。
もちろん、まだまだたくさんあるけれど、あげているとキリがない。
―――…でもたまには、たまには私からしたい。
そんなことを思考の端で考えながらも、今日も桐鵺くんから与えられる快感に溺れる。
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