第7話
次の日の昼頃。
場所は変わり、SKエンターテイメントの事務所にて。
社長室では、1人の男性と1人の女性がソファに座って社長が来るのを待っていた。
1つのソファなのに、距離が異常に空いていて、お互いスマフォを触っており、側から見れば他人の距離。どちらもお互いに興味を示してはいないが……こういう時間はたまに作らされていた。
―――…百々が。
「そう、寧々ちゃんが俺との情事をそんなに喜んでたんだ……」
「いや、別に喜んでないし。むしろ私はドン引きしたんだけど。大体、誤魔化しのために言った友達夫婦の話はマジで結婚して2週間目くらいの時で」
「はあああああああ、俺の寧々ちゃんマジで可愛すぎるうううう!!!」
『可愛すぎて、しんどい』と息を弾ませており、百々はまたドン引き。
「で、写真は?」
「は?」
「は?もしかして、お前、写真撮ってないわけ?」
「撮るわけないじゃん。むしろ会話中に写真なんて撮ったら不審がられるでしょ」
「は、使えねえー。何のために寧々ちゃんに会わせてると思ってんの?」
「自分のためですけど?」
―――…コイツ、マジで出会った時から変わんねえな、と思う。
3年ほど前にこの事務所に入った桐鵺だが、この事務所ではスカウトという形で入社した。彼の思惑としては色々とあるのだが、それはまた今度。
当時、この事務所の稼ぎ頭として働いていたStrawberryの後輩として入ってきた時のことだ。
Strawberryのメンバーを前にしての桐鵺の反応はこうだ。
「桐鵺さん、初めまして〜。奈々です〜!分からないことがあったら、なぁんでも聞いてくださいね〜」
「……はい、よろしくお願いします」
「百々っす。まあ、適当によろしくお願いします」
「はは、よろしくお願いします」
「寧々といいます。千草くん、大変なこととかもあると思いますけど、頑張ってくださいね」
「初めまして、寧々さん。千草桐鵺と申します。寧々さんのことはStrawberryのデビュー当時から拝見しておりまして、とても可愛い方だなと思っていました。ああ、年上の俺なんかが可愛いなんて言ったら、セクハラになっちゃうのかな」
「いえ、そんな。光栄です」
「そういえば、寧々さん。以前にTVで石田屋の煎餅が好きだと仰ってましたよね。俺なんかが烏滸がましいかなと思ったんですが、実は少し買ってきたんです」
「え、そんな!わざわざ!?」
「いえいえ、家の近くにありましたから、気にせず食べていただけると嬉しいです」
「「……………」」
どう考えても蚊帳の外に追い出された奈々と百々は桐鵺の異常な欠片を初対面の時から見ていた。
百々はその後すぐに彼に弱点を握られ、こうしてスパイとして寧々との出来事などを伝えさせられていた。
「はああああ、寧々ちゃんと離れていないといけないこの時間が辛いけど、寧々ちゃんが生きるための全てを俺が稼いで俺が稼いだ金で寧々ちゃんの今と未来を形成できていると思ったら、最高に頑張れるよね。えへへへへ」
「…………」
―――…コイツ、さっさとストーカー罪とかでしょっ引かれねえかな。
百々は蔑んだ目でスマフォ越しに寧々の寝顔を見つめている桐鵺を見ていた。
「奥様は元アイドルです」
事務所に入った当時から
奥様は旦那様にロックオンされていました
本日もご愁傷様でございます
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