第9話
―――…
「あの日を境に、俺の世界は寧々ちゃんでいっぱいになったんだ。すぐにどうでもいい女とは別れたよ。俺にはもう寧々ちゃん以外、どうでもいい存在だったからね。それに、穣に教えてもらったデビューシングル『真夏の甘い果実』を視聴用、観賞用、保存用を買って、ついてきたブロマイドは全7種中3枚全て寧々ちゃんが写っているもので俺は寧々ちゃんとの運命を悟ったんだ。しかも初回限定版にはメンバーの巨大ポスター寧々ちゃんver.のサイン入りが抽選で各一名に当たるっていう応募券が付いていたから、全て応募して運よく当たったあのポスターは既に家宝で部屋に飾ることなく、大事に大事にしまってあるよ。つまり、俺はあの日から寧々ちゃんと結ばれる運命だったんだ!!いや!!出会う前からそれは決まっていたんだ!!」
「…………そうか」
助手席に乗っていた静雄は既に出会いを聞いた自分が馬鹿だったと後悔していた。止まらない。とにかく、寧々ちゃんの話をし始めると彼の口は止まることを知らない。
もうすぐドラマ撮影の現場に着くというのに、まだ彼は『セカンドシングルの寧々ちゃんは苺の妖精で』と嬉々として語っている。
―――…いつになったら、あいつは寧々ちゃんを卒業できるんだ。
いや、奥さんに迎えて1年以上経ったというのに未だに寧々ちゃんファンな彼に卒業という文字は一生来ないだろう。
はあと深い溜息を吐いた静雄に気づかない桐鵺は寧々ちゃんについてまだまだ語っているのだった。
「おはようございます。今日もよろしくお願いします」
「…………」
しかし現場に着くと、あの寧々ちゃん馬鹿は一体どこへ行ったのだと疑ってしまうほどの爽やかファイスで現場のスタッフに声をかけていく桐鵺に彼は頭を抱えたのだった。
「旦那様は元ドルオタです」
もちろん、それは奥様限定です
……文句ありやがりますか?
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