第11話

――――…





「寧々ってさ、旦那のどんなとこが好きなの?」



「え?」



喫茶店の個室内。



百々から私の家の近くまで来たから食事をしないかと誘われて、近所の喫茶店にお邪魔していた。たまに桐鵺くんとも利用していて、店主とは知り合いになっている。



こうして有名人と食事をする時は無理を言って個室を用意してもらっている。有難いことだ。



しかし、人目がつかないからこそ、聞いてきた話題なのか。




「うーん、何だろ……雰囲気?」



「何で疑問系?」



「んー、改めて聞かれると何かはっきり分かんないというか」



「……ふーん」



好きか嫌いかと言われたら、もちろん好きだ。好きじゃないと結婚はしない。



基本的に優しいし、仕事が休みの日は何でも手伝ってくれる。むしろ、家事全般をしてくれるのではという勢いで私に休ませようとする。なんってできた旦那様だろう。自分には勿体なさすぎると思う。



それに彼が仕事関係以外で誰かと食事に行ったりはしない。基本的に仕事以外で夜が遅くなったりせず、プライベートで誰か友人と食事をするのも滅多にない。



家庭優先なイケメンというのは本当に実在するんだな、と一年を経て初めて実感した。最初なんて、スピード離婚かななんて思っていた自分が恥ずかしいし、桐鵺くんにも失礼だったな。



そりゃあ今年のいい旦那様ランキング1位に選ばれるわけだ。



そう納得しながら珈琲を啜った時に『あ』と彼の好きなところを思いついた。





「でも、顔はすごい好き」



「いや、そこかい」



百々に速攻突っ込まれながら、私たちはこの場の団欒を楽しんだ。

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