第4話
マンションの下。
目立たない仕方で停められているバンに乗り込む桐鵺。
かけていたサングラスと黒マスクを外し、彼が開口一番に放つ言葉とは。
「あああああああああ!!!!!!俺の寧々ちゃん、今日も最高にくそかわあああああああああ!!!!!」
―――…である。
「……朝から通常運転だな、桐鵺」
俳優の千草桐鵺のマネージャーを3年ほど務める
車の助手席に座って苦笑いを通り越した呆れを表にするが、桐鵺にとってそんなものはお構いなし。
「俺の手に擦り寄ってくる頬なんてすべすべだし、昨夜から愛しすぎて唇がちょっと腫れてて赤くなってるちっちゃなチェリーが美味しすぎるし、何より起き上がれないのが俺のせいっていうのが言葉に言い表せないほど最高な気分だし、目を開けようと頑張ってるあのひたむきな姿に朝勃ちしちゃうし、突っ込みたい気持ちをめちゃくちゃ抑えて一回抜きたい気持ちにさせるなんてやっぱり寧々ちゃんは罪な女だよね!!」
「頼むから、ちょっと落ち着いてくれ。桐鵺」
ははは、と運転手を務めている
「大体、寧々ちゃんと結婚してもうどれくらい経ったんだっつーの」
「は?静雄さん、今、寧々ちゃんの名前呼んだ?呼んだよね?何で呼んだの?俺の寧々ちゃんの名前?ねえ、何で?」
「……奥さんと結婚してどれくらいなんだ?」
「1年と3ヶ月と11日!」
―――…そこまで毎日計算してるのかよ。ドン引きだわ。
とは言わないのは、もう既に何度も彼に言ってきているからだろう。それこそ今更だ。
「はああああ、俺の寧々ちゃん。今日も生きててくれてありがとう」
「…………」
あれが人気急上昇中の俳優とは思えない。
自分のスマフォの画面とキスしている男(26歳)をバッグミラー越しに冷めた目で見つめつつ、マネージャーは今日も長い溜息を吐いた。
朝の1日はこれから始まる。桐鵺の通常運転。
いつも通りの朝を迎えるのである。
「旦那様は奥様を溺愛中です」
溺愛具合は、少々異常です
ご注意ください
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