復讐①

 目が覚めると、僕は何処かの家のベランダにいた。


 ここは…どこだ?僕はなんでここに…

 そして、僕の目の前にはマーシャと…


 気を失う前に見たおじさんが…いた……


 気を失う…前…?




 …そうか。


 僕の両親は殺されたんだ。


 あの殺人鬼に。


 勇者に。


 殺された…!


 クソッ゙!!


 クソオッ……!!


『殺してやる、勇者……! バラバラのグチャグチャにしてやるから! だから! 首を洗って待ってろ! …ゲフッ!ゲフッ!!』


 その後、僕は、マーシャに肩を撫でられながら、吐いた。


 情けない。


 マーシャの親だって恐らく殺されてるはずなのに。


 それなのに。


 僕のことをちゃんと考えてくれてる。


『僕…情けないなあ』


『エミール…』


『マーシャを僕が守るって、告白するときに約束したのに……僕は…マーシャに守られてばっかりだ』


『そんなことないよ。私だってエミールのことを守りたいよ。だから、もし君がピンチになった時は私が助けるから、私がピンチになったら君が助ける…ってことで良い?』


『うん…!うん!!』


『それに、私だって…お父さんやお母さんを殺したあの殺人鬼を許すつもりはないから……一緒に戦おう…ね?』


『ああ。2人で勇者を倒そう』


『…ゴホン。そろそろ良いかな?』


 僕らを救ってくれたおじいさんが口を開く。


『君たちに悪い知らせがある』


『これ以上、悪い知らせって…? 何ですか?』


『私もこれ以上悪い知らせなんてないと思うけど…』


『確かに、そうかもしれないが…現状から考えると最悪だ…単刀直入に言うと、勇者がここに向かってきている。この隠れ家の場所が分かったらしい』


 その情報はこの時の僕らにとって、あまりにも刺激が強すぎる情報だった。


『なら殺さないと…!』


『私も!!』


『落ち着け。二人共』


『…………』


『…………』


『まず、今の君たちでは勇者に勝てない。だから、まずは君たちはその前に、旧勇者パーティーの3人を倒すのだ。何故なら、奴らは堕天した。そんな奴らを放っておくわけにはいかない』


『勇者パーティー…堕天…?』


『残念だが、説明している暇はない。それに…何より旧勇者パーティーを倒していけば、村の襲撃事件の真相が分かるかもしれないしな』


『…わかりました』


 マーシャも頷いた。


 緊急の状況だ。


 それに、今の僕らが勇者に勝てないのは明白だった。


 だから、悔しいが、その提案を飲む以外の選択はなかった。


『それでは行け、真に勇気を持つ者たちよ!さらばだ!また必ず会いに行くから待っておれ!』


 僕らは振り向かずに、走ってその場を後にした。


(………………………)


 ー物語の視点は勇者に移る。


『おい、ラングルド』


『何だ? ヘンリー。君から僕に話しかけてくるなんて君らしくないじゃないか』


 ー僕の名前はラングルド・ハーヴェスト。


 この世界の勇者だ。


『俺にマーシャ・アドミニストレーターを殺させてくれ』


『…ふーん。良いよ』


『あっさり譲るんだな。お前らしくないな』


『まあね。僕はマーシャをただ殺すよりも、もっと面白いことをしようとしているだけさ。その最初の役に君はピッタリさ』


『…?…まさか…! お前! 俺があのガキどもに勝てないとでも…?』


『まあ、その言葉の解釈は君に委ねるとするよ。ヘンリー・テイラー。地上最強の狙撃手よ。君の弓の腕はもちろん信頼している。それだけは忘れないでくれ』


『当たり前だ』


 こうして、ヘンリーはいなくなった。


 フフッ。


 クククッ…!


 正直な話…ヘンリーは負けるな。


 何故なら、マーシャの仲間には…あのエミール・ハーヴェストがいるからな。


 彼の剣技は本物だし、恐らく今回の戦いで彼の剣技は今までで比べられないものになる。



 …フフッ。クククッ。


 全く……


 愛の力は恐ろしいものだ。


 だからこそ…


 僕はそれを平等に皆に与えなくてはならない。


 焦るな…僕。


 "計画"が完遂される日は近い。




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