花束・黒髪・君と夏①

ナターシャは、世界で最も愛していたマルス・エマーソンをかばって死んだ。


『ナター…シャ…?』


マルス・エマーソンは震えていた。


マルス・エマーソンにとって、この死に方はどこかで見たことがあった。


いや、確実に見たことがあった。


その男の震えは増していくばかりであった。


『全部…思い出した。俺達は何をしていたんだ?これまで…あの方の…あんな奴の手下として』


すると、マルス・エマーソンはどこかに歩き出した。


そして、ブツブツと何かを言っていた。


その言葉は…


『殺さないと…魔王は……必ず……俺の手で』


これだった。


しかし、この言葉はエミール達には聞こえなかった。


そして、これからもマルス・エマーソンの言葉を…この事件の真相をエミールが聞くことはない。


なぜなら、次の瞬間…


無防備になったマルス・エマーソンの胸に、マルス・エマーソンの凶刃が突き刺さったからだ。


『終わりだ!!マルス・エマーソン!!!』



ーマルス・エマーソンは安堵していた。


なぜなら、これから死んだ仲間達に会えるからだ。



それに。


魔王はあの少年少女達がなんとかしてくれる。


俺は心の底からそう思った。

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