私の嘘と君の涙④
ロイドは私を庇って、たくさんの槍で身体を貫かれた。
全部…私のせいで…
私なんかがいなければ。
ロイドは…
ロイドは…!!
『ロイド…?なんで…』
『私のこと…嫌いじゃないの…?ねえ!ロイドオ!!なんで…!!』
『私なんかのために!!ロイドの本当の気持ちを知らずにあんなことを言った私なんかのために…!!!』
私の顔はもう涙でビショビショだった。
『マーシャ』
『ロイド…!』
『愛してる!!』
『ロイ…ド?』
『わりい。今のやっぱ無しで。お前は俺のことなんか忘れて幸せに生き…』
『マーシャ……?何を』
私は涙をポロポロこぼしているロイドの唇にキスをした。
抑え込もうとしても、滝のように垂れる涙をロイドの頬に伝わせながら、ロイドと最初にして最後の熱いキスをした。
『ロイド…』
『マーシャ。俺』
『良いの。私と一緒に…逝こ?』
『ごめん!ごめん!!俺…!!俺ェ!!』
『今だあ!!兵士たちよ!!ロイド・アガルタごとマーシャ・アドミニストレーターを刺し殺してしまええ!!!』
『ロイド…』
『私も愛してるよ』
その瞬間、ロイドは…
無邪気な表情で微笑んだ。
『マーシャ。幸せにしてやれなくてごめんな』
ロイドはそう言い残して、槍でめった刺しにされた。
もちろん、私もそれでめった刺しにされた。
今思えば、あの最後の言葉こそがロイドと私の約束だったのかもしれない。
ーこうして、私は死んだ。
だが、私は今…世界から忘れ去られるまで、マーシャとして存在していた。
確かに、私はもう既に今から10年前に死んでいた。
なのに…何故か。
それは、私がこの世に未練を抱えている霊体だからだ。
そう。
私はこの世界でまだやり残していることがあるのだ。
だから、私が霊体としてに再び、この世界の空気を吸ったとき…私はすぐに気づいた。
今の私に何が足りないのか。どうして、私は再び霊体としてこの世界に存在することになったのか。
それは…私にはまだ見ぬ大切な人がいるからだ。
そして、その大切な人とはお父さんとお母さんだと思った。
さらに、その予想はある程度は当たっていた。
だが、お父さんとお母さんは私を愛してくれるし、私が霊体であることに気づいたりはしない。
だけど…何かが足りなかった。
そう思いながら、私達があの件以降移住した村の生活をある程度満喫していた。
だけど…
私は、思い知ることになる。
私がいるからいけないんだ、って。
そう気づけたのは…村長が言ったとある言葉があったからだ。
ーある日、村長が大事な知らせがあると言い、村民を集めた。
そして、私達はこのときに、この世界の厳しさを知ることになる。
というのも、その日、私達はピクニックに運良く出かけていたため、見つかることはなかったが、村を出る前、私達は物陰から村長の演説を聞いた。
その演説とは…
『村長として命ずる。マーシャ・アドミニストレーターは、調律者の力を持つため、この村では異端である。見つけ次第、捕らえたうえ惨殺せよ』
これだった。
私達は逃げた。
逃げて、逃げて、逃げた。
次の村でも、次の町でも私達は迫害された。
何度も、私は自殺しようとした。
でも、私は霊体だった。
だから、この世の未練が無くなるまで、私は死ねなかった。
そして、そのことを私を心から愛してくれるお父さんとお母さんには言えなかった。
私はよく夜泣いた。
移動中のテントや、誰かから親が借りてくれた家で泣いた。
それを見て、私の背中を撫でてくれるお父さん、お母さん。
情けない。
私は生きる価値がないのに。
私は…もう死んでいるのに。
そして…私は。
そのことを、両親に言えずにいるのに。
(………………)
そして、それから4回目の移住先である村に行った。
その村ではちょうど私達が移住した日に、冬祭りが行われていた。
そして…
その冬祭りで。
私はエミールと出会った。
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