私の嘘と君の涙③

『ちょう…りつしゃ…?』



『そうだ。お前は儂らにとっての悪魔の子だ。だから、お前を殺したあと、また次の調律者を殺す。その繰り返しだ』



『いや…だ。死にたくない』



『恨むならこの世界の神々を恨め』



『何故なら…調律者はこの世界に不要なのだからな!』


『やれ…お前ら』



兵士は槍を手にとる。


そっか。


本当に私…


殺されるんだ。


『やれ。どうした…はやくやらんか』




嘘。


どうして?


君がここに??


『なにをやってる!お前らはやくやらんか!!』


『でも…先日、血のつながりが見つかって皇太子になられた坊ちゃんが…』


『ああ!あいつがどうした!!?』


『後ろでなんか言ってます!!』




ロイド…逃げて。


『やめろ!!!お前ら!!!こいつはこの俺"次期国王"ロイド・アガルタ様の大切な人だ!!絶対に手を出すなよ!!!』


『ロイド…!』




しかし、それを見た国王ほ手を叩きながら、爆笑した。


『貴様に!何ができる!!貴様は確かにこの国の未来ではあるが!!たかが子供に過ぎない!!なんの覚悟もないだろう!!』


『くっ!!』


ロイドはのけぞる。


『もし!!もしだ!!もし貴様が覚悟を示せたなら!!この小娘の命を見逃してやろう!!さあ!!どうする!!?ロイド・アガルタ!!!』




ロイド……


助けに来てくれて嬉しい。


でも、私ね。


やっぱり、あなたのこと……好きだから。




あなたに危険な目に遭ってほしくないから。

これからも幸せに生きてほしいから。



だから、今から嘘をつくね。


だからお願い、ロイド。


私のことを嫌いになって?


私のこと…忘れて?





『ロイド…!』


『マーシャ!!俺はお前を助けに!!!』


『私はお前のことが大嫌いだ!!!ずっと!!!これからも!!!!』


『マーシャ…?』


『私は!!あんたに嫌いって言われたけど!!!私のほうが大嫌いだ!!!大嫌い…!!大嫌い!!!』


『マーシャ……』


『ロイド!!!ロイド!!!』



気づいたら、私の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。


『はやく…!私のこと忘れてよ!!』



ーそれが私の心から漏れてしまった本音だった。



『時間切れだ。兵士たちよ。槍でその女を突き刺せ』


『御意!!』






私はまぶたを閉じる。


甲冑をつけた男たちが数人走ってくる音がした。


死んだ。


そう思った。





しかし…どれだけ時が経っても…


痛みは訪れなかった。




私はまぶたを開けた。




そこにいたのは…


『ロイド?』




『やりおったな!!せっかく苦労して跡継ぎを見つけたところを!!!ロイド・アガルタァ!!!!!』



叫ぶ国王の声…


戸惑う兵士たちの表情。


群衆のざわざわとした話し声。



全てが非現実的だった。



私は"もう一度"、下を見た。



すると…


そこにいたのは…





複数の槍で身体のあちこちを貫かれたロイドだった。

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