私の嘘と君の涙②

これはそんなある日のこと。


『マーシャ!おはよう!!』



『おはよ〜!お母さん!お父さんは?』



『お父さんはね。今、仕事で王宮に行ってるところよ』


ふ〜ん。


お父さんが王宮へ…か。


お父さんはずいぶん出世したもんだ。




すると、お母さんの顔が険しくなった。



『あと、マーシャ』


『なに?お母さん。急に怖い顔して…』


『ロイドくんにはもう話しかけてはいけません』


『え?…』


この一言を聞いたときは、ロイドに話しかけれないことの悲しさより、なんでお母さんがあいつのこと言ってるんだろう?が少し勝っていた。


しかし、それはただの強がりだと気づく。


何故なら、お母さんがここから遠く離れた町の知り合いのもとへ行ったあと…私の頬を伝って涙がポロポロと、こぼれていったからだ。




ーなんだろう。


この気持ち。


私、なんでこんなに悲しくなっちゃってるんだろう。


涙が止まらなくなってるんだろう。



ー私は誰もいない部屋で、独り言を呟く。


『会いたいよ。ロイド』


思えば、あいつと出会って3年間。


あいつと出会って、いっぱい話して、いっぱい喧嘩して、お互いにいっぱい助け合っていくうちに…


私は。


あいつのこと…好きになってたのかもしれない。



(………………)


ー私は家を抜け出し、ロイドのいつもいる大広場に行った。


そして、案の定…ベンチにちょこんと座っているロイドを見つけた。


『ロイド。会いにきたよ』


『お前…』


『ロイド!私…!』


『なんで来た。マーシャ』


『え…?ロイド』


『俺はお前のことが大嫌いだ。それはこれからも同じだ…!とっとと失せろ!!俺に血だらけになるまで殴られたく無かったらな!!!』



『………………なによ』


このとき、私は怒りのあまり…言ってしまう。



『私も!!あんたなんか!!この世にいなければ良かった!!死んでしまえ!!』



『ああ!!それでいい!!とっとと失せろ!!二度と俺の前に現れるんじゃねえ!!!クソ女!!!!』



こうして、私はロイドと絶交することになった。



(………………………)


それから、私は家へ向かって走った。


走って、走って、走った。


まるで、何かから逃げるように。



なんで…!!


ロイド!!


思い出しただけでイライラする!!


あんな奴好きになった私が馬鹿だった!!!


あんな奴!!!


あんな奴!!!




大嫌いだ!!!!




『見つけたぞ、嬢ちゃん』


『…え??』


私は足を止めた。


何故なら、私の目の前には王国騎士団の兵士らしき男が立ちはだかったからだ。



なんで…王国騎士団がこんな辺境の町に……


『捕らえろ。絶対に殺すなよ』



私は背後の男に後頭部を思いっきり殴られ、気絶した。




私の目の前は暗闇に包まれて…


その暗闇の中で…これからの不安と、ロイドとのことの後悔といらだちにうなされ…







そして…


目が覚めると……


私は。



町の広場の中心で縛られていた。


全身を木の縦棒にロープをきつく巻きつけられていて、私の力ではとても逃げられない。


私はまだ魔法も使えないし…


でも。


お父さんとお母さんなら私を助けてくれる!!


『お父さんと!!お母さん!!!』






『は……………………ど…こ』


私はそう叫んだが、そのとき私は恐ろしい人の怨念を感じた。


それは私に町じゅうの人達の冷たい目線だった。


みんな、私を睨んでいた。


私と仲良かった子供や、優しくしてくれた大人も私を睨んでいた。


みんな…私の敵なの……かな?



これは…夢?



私は…わるいこと…なにも…してないよ?



ねえ。


神様!


いるなら…!


私をはやく助けて!!


お父さん!!お母さあん!!!



私を!!助けてよお!!!


『無駄だ。お前のお父さんとお母さんなら、こうなることを予測してどこかに行くように儂らが仕向けたわい』


え…?なんで。



なんで国王陛下が…ここに。



国王陛下は私のことを睨みながら、言った。



『マーシャ・アドミニストレーター。お前は生まれるべきでは無かった』



『……なんで』



『お前が最も王国の邪魔となる存在だからだ』



『だから…なんで』



『お前は神が無作為に選んだ生まれつきの権力者だ』


『だから!なんで!!』


『もしかして…お前、自分が何者か知らないのか?』



『私は…!誰…?なの』





『なら、望むとおり教えてやろう』


『お前の正体は…この世界の真の頂点にして、王国の最も危険な反乱分子ー"調律者"である』


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