終わりの始まり

ーエミールは心臓を貫かれて、死んだ。


この戦いの勝者は勇者となったのだ。


そして、その次の刹那、空気が激しく揺れる。


この戦場の辺り一帯に、勇者の果てしない魔力が放たれたのだ。



『嘘…!!』


『エミール!!!!エミール!!!!エミールぅ゙!!!!!ぅ゙わあああああああああ!!!!』


マーシャの顔はぐしゃぐしゃになる。



『勝った…!僕の勝ちだ!これで…!この悲しい世界に終終止符を打てる!!』



『殺してやる…』


マーシャはフラフラしながら、立ち上がる。


そして…杖を握りしめる。




『殺してやる…!!』


『殺してやる!!!!!勇者ラングルドぉ゙!!!!』


マーシャはそう叫んで、突っ込んだ。


『エミールを!!!!!!返せえええ!!!!!!!』


マーシャはそう叫ぶと、詠唱を始めた。



『大地を壊せ!!!崩壊術式!!!!!"ロスト・アーク"!!!』



そして…詠唱が終わると、地面に手を触れた。


すると…地面が突如、崩壊を始めた。


そして…その崩壊は生物にも伝播する。


『無駄だ』


しかし…勇者エミールには効かなかった。


何故なら…彼の魔力はあまりにも強力で、崩壊の効果を魔力の圧だけで相殺してしまったからだ。



『嘘…!!!』


そして…その次の刹那、勇者ラングルドは呪文を唱えた。


『精神魔法"心部暗転" 』


『ぐ…!!!』


その精神魔法は、大切な人を失った今のマーシャの精神を崩壊させるには十分なものだった。



『ぅ゙わああああああああああああああああ!!!!!!』


マーシャは地面に倒れ込んで、発狂し始めた。



『私が死ねば良かった!!!!私が死ねば良かったのにぃ゙!!!!私が!!!!いきてる…!!!から!!!!私が…!!!!しなない!!!から!!!!!』


『私が…!!!みんなを不幸にする…!!!!!』


『だから私は…!!!!いきるべきじゃなかった!!!私は!!!ロイドといっしょに!!!しぬべきだった!!!私が!!私が…!!!私…!!が……!』





『私……!が…!!!いきてるから!!!人がしぬんだ…!!!!』



ーこうして、マーシャの意識は闇へと落ち…


調律者の権能は暴走を始めた。


そして…勇者ラングルドの思惑通り、調律者の権能の暴走によって…


勇者ラングルドは化物へと変貌した。


…そう。世界を滅ぼす"終末獣"になったのだ。



そして、これから行われるのは…終末獣による人類への生からの解放であり、そして…彼の"信仰している"楽園の神の最後の審判の始まりでもある。


そして…今まで死んだ全ての人間の精神がこの世に蘇り…


優しい人や良い人だけが最後の審判によって、救われる。


これこそが…勇者ラングルドの描く新しい世界秩序であった。




ー終わりが…始まる。

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