絶対神域千年血戦⑤
ーエミールとラングルド。
二人の相容れぬ"最強"は剣を交える。
そして…その次の刹那、天が割れ、遠くの海は揺れ、空飛ぶ鳥が悲鳴をあげる。
『この程度か…!!英雄エミール!!』
勇者の顔には余裕が見えた。
しかし…かといってエミールも余裕が無かったわけではなかった。
なぜなら…彼の傍らには。
"最強のサポーター"のマーシャがいる。
『隙ありだ!』
ー勇者ラングルドは魔術師マーシャの力を過小評価していた。
彼女は調律者の権能を持っているただの少女に過ぎない、と勇者は考えていたのだ。
つまり、マーシャが何かしようとしてきても英雄エミールとの戦いにはなんの影響も及ぼさない…と。
『反応が遅れたな!!英雄よ!!もらったあ!!!』
勇者ラングルドはそう叫びながら、エミールの首をはねようとする。
しかし…
その次の瞬間、エミールが消えた。
勇者はあたりを見渡す。
すると…マーシャから挨拶代わりの魔力弾が飛んでくる。
無論、そのような魔力消費をケチった魔力弾が勇者ラングルドに効くはずはなかった。
しかし…これによって勇者は確信を持った。
『マーシャ・アドミニストレーター…!!君がエミールを転移させたのか!!!余計な真似を!!』
勇者ラングルドは驚きを隠せなかった。
何故なら、"あの"マーシャが最高難易度と名高い詠唱なしの転移魔法を使ったからだ。
しかし、そんな勇者の驚きの表情を見たマーシャの口角が上がる。
『勇者ラングルド。貴方、私の転移魔法に驚いてるみたいだけど…まずは自分の心配をしたら?』
ナニカを感じ取ったラングルドは後ろを振り向く。
すると…そこには地平線から音速を遥かに超える速度で向かってくる英雄エミールの姿だった。
『化物め…!!』
勇者ラングルドは超高速で向かってくるエミールをそう言って、睨んだ。
その勇者ラングルドの表情は焦りの色も感じさせるような表情だった。
そして…勇者ラングルドはため息をついた。
(この剣技の名前を僕は聞いたことがある。その名も…剣技"雷土"。この技は圧倒的な破壊力の代わりに、その剣技を用いた者を一分間動けなくする反動がある。つまり英雄エミールは、この一撃に全てを賭けている。ということは、これを凌げばこの僕勇者ラングルドの勝ちだ。しかし本来ならこの全力の一撃を防ぐ手立てはない。………まあ、それも…僕以外なら……だけどね)
『これが俺の全力だ!!!受け取れえ!!勇者ラングルド!!!』
音速以上の速度を維持しながら、剣を振り上げるエミール。
それに対して、ラングルドは"無防備"だった。
そして…次の刹那。
砂ぼこりが舞う。
そして…
砂ぼこりがなくなり、視界が晴れ…
そこにいたのは。
『エミー…ル?』
勇者ラングルドに心臓を貫かれた英雄エミールだった。
その光景は異常なものだった。
無防備な勇者が、英雄エミールを突如貫いたのだ。
これはありえないことだった。
…まあ。
・・・・・・・・・
勇者が時でも止めたという視点を除けばの話だが。
『エミール!!!』
『マーシャ…ごめん…ゴフッ!……な』
ーこうして、エミールは地面に倒れた。
そして…
もう二度と…
彼が目覚めることはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます