僕は勇者の殺し方を知っている。⑥
ークルーガーさんの葬式をした。
子供達はみんな泣いていた。
だけど、誰一人僕を責めなかった。
でも…
『僕がクルーガーさんを殺したのに…だろ?』
頭の中で響いたその声は…
僕の中の僕…?
もう一人の僕…?
また…僕のことを嘲笑うのか?
『ああ、そうだ。壊れた奴は生きてちゃいけないからな。お前のことだぞ?エミール』
…うるさい。
僕の脳内で喚くな…もう一人の僕。
『うるさい…?心外だなあ。僕は』
黙れ。
僕は変わるんだ。
あの世に行ったとき、クルーガーさんに顔向けができるように…後悔がないように…生きるんだ。
生き抜くんだ。この世界を。
『何言ってるんだ…?エミール。お前はこれから地獄に行くんだぞ?だって…お前は人殺しだ。お前がこの世界から許されるわけない。それに…お前は殺人未遂をおこした前科人だ。まだ幼すぎたからっていう裁判官の温情でたまたま無罪になったからって…世間が許すと思ってんのか?』
……分かってる。
僕は殺人未遂を起こした。
だから、これから償っていくんだ。
これから…自分の罪と向き合っていくんだ。
『自分に自惚れるのもいい加減にしろよ。エミール。お前は…!………まさか。エミール、僕がお前にとっていらない存在だと?』
いや、違う。
お前は僕で、僕はお前だ。
だから……お前とも、これから向き合っていくんだ。
お前のような僕の負の感情だって…大切な僕の一部だ。
だから……
僕はお前も愛すると決めたんだ。
だから……これからも暴れすぎずにしてくれよな?
お前も僕の大切な家族なんだから。
『ずるいぞ…!!エミール!!お前…!!!立派になりやがって!!!』
ああ。ありがとう。
もう一人の僕がそう言ってくれて、嬉しいよ。
これからもよろしくな。僕の負の感情。
ーそれから、その声が聞こえることは無くなった。
(………………)
そして…葬式が終わってから、僕は里親に預けられることになった。
そして…僕はそこで愛され、幸せに育った。
マーシャという大切な人に出会えた。
まあ…その大切な人とずっと一緒にいられなかったのは悲しかったけど……
でも。僕は幸せだったよ。
クルーガーさん。ありがとう。
だから……僕はそんなクルーガーさんが愛し、今のお父さんと2人のお母さん…そして、マーシャが愛したこの世界を生きている人達の魂を守りたい。
だから…そのために僕は今から、マーシャに"僕が気づいたこと"を全て伝えようと思う。
ーそう。
"僕が知っている勇者の殺し方"を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます