僕は勇者の殺し方を知っている。⑦
ーマーシャと僕以外いない暗闇の中で…
僕は嗚咽して、涙が伝っているマーシャの頬にそっとキスをした。
『エミール…?』
『マーシャ…僕は確かに、死んでいるかもしれない。もう生きることはできないかもしれない』
『エミール…!!』
『だけどね。僕は君と出会えて幸せだった。だから…なんていうのかな』
『いや、難しい言葉を並べようとしたけど、僕にはそんなのは無理だ。…だから、はっきり言おう。…マーシャ』
『僕は…君のことが好きだ』
『私も…!!大好き!!』
『うん。だからね…マーシャ。もう苦しまないで欲しい。自分を責めないで欲しい。僕はマーシャからこんだけの幸せと愛を受け取ったんだ。………だからさ…!!』
気づいたら…マーシャの涙だけでなく、僕の涙までも頬を歌っていた。
『一緒に…!あの世に行こう!!僕ら2人で一緒に…!!後悔がないように!!!』
マーシャは震えながら、頷いてくれた。
それから少しの沈黙のあと、僕はマーシャにあることを打ち明かした。
『あのな…マーシャ』
『エミール?どうしたの?』
『マーシャ。僕…実は勇者の攻略法っていうか…なんていうか…まあ。あれだ。勇者の殺し方を僕は知っているが…それはそれとして、僕はこの世界の崩壊を止める術はない』
『…?』
『ああ、僕たちは終末獣に勝てない』
『…………?今…なんて』
『そして、この世界は滅びる』
『………そん…な?』
『もう…マーシャやクルーガーさんの愛したこの世界は救えない』
『…………』
『みんな新しい世界に転生する。もうこの世界ではみんなは生きていけない。みんな終末獣の力で殺され、この世界を影で操る黒幕の力で別の世界に転生させられる』
『………そんなの』
ー僕だって、こんな事言いたくなかった。
こんな事認めたくなかった。
そう。最初から分かってたんだ。
終末獣が生まれた時点で…間違いなくこの世界は終わる。
でも…
対処法はある。
その世界を平和な世界にするための策は無いわけではないのだ。
『だけどな…マーシャ。新しい世界で勇者を殺し……全ての黒幕を最高神の座に座らせないことはできる』
『それって……』
『ああ、殺される間際…走馬灯とともに、勇者の過去の記憶も見てな。それで真実を知ったんだ』
『過去の…記憶…?』
『ああ。そうだ。……そして…そこで知ったことこそが僕の知っている勇者の殺し方であり、そして…僕の愛した人達が愛したこの世界の人達の魂を黒幕の手から守るための唯一の手段だ』
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