真実①
『堕天とは、大きく分けて2つだ。まず、心を何者かに操られること。そして、自らの心の傷によって精神崩壊し、"黒い心"を持った怪物として生まれ変わることだ』
『…なるほど』
『まあ、後者のほうがやばいのは確かだがな。そんで…』
『勇者は調律者を殺さないと死なない。このことはお前は知ってるか?』
僕は戦うことを諦めた元勇者パーティーの男の問いに頷いた。
『そうか…それを知ってるのか……やっぱりお前は特別だな』
『御託は良いからさっさと続けろ』
僕は奴の目を睨んだ。
『悪い悪い。そんじゃ話を続けるわ…でも』
奴は少しため息をついて言った。
『お前は何故調律者を殺そうとしない?』
『いや、それは誤解だな』
『というと…?』
『調律者も必ず僕が殺すつもりだ』
『…ほう』
『そんで次の質問だ』
『なんだ…?』
『勇者パーティーの残り2人は今どこにいる…?』
すると、突然この男の表情が一変した。
『それはなァ…』
奴はニヤァ、とした。
『お前の後ろだ』
その瞬間、僕は反射的にこの男の首の神経を切り裂きながら、振り向いた。
奴は死んだ。殺せた。感触でわかる。
だが、僕の背後には…
銀髪の男の戦士と黒髪の女の魔法使いらしき奴らがいた。
『『終わりだ!エミール・ハーヴェスト!!』』
奴らの魔法と剣が僕の視界を覆う…!
まずい!!
死ぬ…!!!
マーシャを守らないといけないのに…!!
くそっ…
まずい。視界が…消える……
意識が…!!
(………………………)
それからどれくらい経っただろうか。
僕は気づいたらよくわからないけど、とても暖かい空間にいた。
暖炉の焚き火の音がするような…
そんな暖かい部屋だ。
『起きて!学校に遅刻するわよ!!』
なんだ…この懐かしい声は…?
僕はさっき…敵の攻撃で死んだはずじゃ。
僕は目を開けた。
下を見る。
ベッドの下には温かい色の木でできた床があった。
まるで、それらを僕は少し前までは毎日見ていたような…
いや、気のせいだろう。
そう思いながら、僕はベッドから起き上がった。
すると……
僕の目から涙が溢れ出した。
止まらなかった。
『おかあ…さん…?』
なぜなら、僕の目の前には、死んだはずのお母さんがいたからだ。
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