僕は勇者の殺し方を知っている。②

この物語は、この僕エミールが勇者の殺し方を探す復讐の物語である。


しかし…それだけではない。


僕とマーシャとの愛の物語でもあり…


僕が死んだお父さんと"2人"のお母さんの分まで精一杯生きる物語でもあり…


そして、僕があの人が大好きだったこの世界の子供達を守る物語でもある。


そして、この僕の思い出はそんな僕とあの人と出会ってからの思い出である。

(……………)

『エミール・ハーヴェスト!!!この万引き小僧が!!!待ちなさい!!!りんごを返しなさい!!!!』


『嫌だね!!!病気の母さんが食べるんだ!!!』


『言い訳はいらない!!!さっさとりんごを返せえ!!!待て!!!このクソガキがあ!!!』


僕の名前はエミール・ハーヴェスト。


病気のお母さんを治すために毎日食べ物や金目のものを盗んでいる4歳のガキンチョだ。


そして…今日もこの瞬足の足で追手のおばさんから逃れ、家にいるお母さんにりんごを無事に届けることができる…


はずだった。


『ここまでだ!!このガキがあ!!!』


僕は突然、目の前に現れた屈強な黒服の男達によって締め上げられた。


そして…その男は馬乗りになって、僕を1分間ぐらいずっと殴って、殴って、殴った。


そして…僕は気を失った。



(……………)


『おい、聞こえるか?ガキンチョ…おーい!』



僕はボロボロの家の部屋の一室で目を覚ました。



『あれ…?さっきの人達は…』


『あれは俺が追い払った』


『………あなたは』


『俺はトーマス・クルーガー。適当にクルーガーさんとでも呼んでくれ』


『……はい。クルーガー…さん』


僕はいまいち状況が理解できていなかった。


しかし…男は優しくを僕の肩をポンポンと叩き、とあるものを渡してくれた。


『ほら…お前にやるよ』


『え…?これって…金貨……こんなに…?』


『こんなに!!!良いんですか!!こんなに!!!こんなに!!!!!』


僕は大量の金貨を前に目を輝かせた。


『ああ、良いさ。あと、ちなみになんだが…俺は悪い奴らから金目のものを盗んで、それを金貨に変えて、その金貨をお前みたいなガキンチョに渡しているような奴だ。つまり…俺はお前と同じ盗人だ』


『盗人……』


『ああ、そうだ。だから…お前に一つお願いがある』


『お願いって…?』


『毎月、俺は毎月、今日と同じ日の同じ時間に、ここにやってくる。だから…エミールだっけな?お前…もう何も盗むなよ?』



僕はクルーガーさんの目を見て、言った。


『うん。約束する』


『約束だぞ?』


『うん』


すると、クルーガーさんは僕の頭をなでてくれて、言った。



『それじゃあな。お母さん治るといいな』



『うん!!!!』


この時の僕は人生で始めて笑顔という表情をした気がする。



そして…僕はウキウキしながら金貨を抱えて家に帰った。



『ただいま!!!!おかあさ…!!!!』











『え…??おかあ…さん?』


お母さんは僕がいない間に病気の症状が急に悪化したらしく、布団の中で血を吐きながら死んでいた。

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