第13話

   鈴木光希の告白




光希は一点を見つめている。両手を握りしめて、しっかりと話し始めた。



ダイベンシャ様を、殴って殺しました。あの人を殺して、埋めました。すごく重かったけど、頑張りました。

朝に家に帰って、清にお願いして、村から連れ出してもらいました。全部、俺がお願いして、やりました。清に、やらせました。

中3の、お父さんが死んじゃった後に、清の家に行きました。清の家の子になりました。清の家の子になってすぐ、ダイベンシャ様の所に行くようになりました。最初は、よく、わかりませんでした。痛くて、怖くて、気持ち悪かったです。嫌だって言ったけど、ダイベンシャ様と、新しい両親…清のお父さんと、お母さん、も…頑張りなさいって、言いました。俺の、お父さんとお母さん、本当の………死んじゃったの、俺の、せいだから。悪いものが、ついてるからって。ダイベンシャ様とお勤めしたら、悪いのはなくなって、みんな、幸せになるって。

お勤めしたら新しい両親が、喜んで、幸せだって、言ってました。俺、他に、行くところがないから。だから、あそこで、お勤め、逃げなかったです。逃げるところ、わからなかったです。

ダイベンシャ様、お勤めの時に、たくさんひどいことを言いました。

『嫌がってるのも、本当は喜んでる』『両親が死んだのは汚いからだ。悪いもので汚れてる』『お前は汚い。だからお勤めで俺が綺麗にしてやる』

でも、お勤めの時、

『こんなことをして、死んだ両親は悲しんでる』『お空から恥ずかしいところを見てる。もうあの世で顔を合わせられない』

って、言ってました。あと、あとは…たくさん、言われて、苦しくて、あんまり、覚えて、な…思い、出せない。俺、やだって、いやだって、言ったのに。俺が、いけないんですか?俺、お、僕、僕が、悪い、悪いです。悪い、ものです。僕が、わるいから、僕、僕が



ーーー光希は頭を抱えて泣き、話ができなくなった為中断。30分後、本人の希望により再開。



俺、どうしていいのかわから、なかったです。たくさん、悪口を、言われて。どうしてお母さんとお父さんじゃなくて、こいつが死ななかったのかなって、思ってました。そんなことを思うのが、いけないんだって、思い、ました。

あの人、清を、追い出すって、言ってました。清を追い出して、別の人を、清の家の子に、する。清も、別の人にも、俺のお父さんと、同じ仕事をさせるって。

清のかわりに来る人は、新しい兄弟だって、言ってました。清のお父さんお母さんと、親子になるって、言ってました。

『光希のお父さんは、お仕事をしすぎて死んじゃったんだよ。借金を返すためだから、きつい仕事なんだ』って、言ってました。借金する先も仕事先も、ダイベンシャ様が紹介した、そうです。お父さん、全部裏でつながってるのに、知らずに必死に働いて、借金を返済してたそうです。

『光希のパパは馬鹿だね』って、言いました。俺の、お父さんの保険金、たくさん使ったよって、言ってました。お金がないから、光希は逃げられないんだ、って。清も別の人も、俺のお父さんみたいに追い詰めて、働かせて、し、死んで、もらって、保険金、残させる。清は趣味じゃないから、いらない。働かせた給料も、さしおさえだ、って。親に殺されるのと、働いて死ぬのと、どっちが先かな、って。

清、お父さんと、お母さんに、叩かれてて…ダイベンシャ様が、命令、してた。言ってました。笑って。

俺の、お父さん…お母さんが死んじゃって、ダイベンシャ様を信じるようになって、新しい仕事をしてから、どんどん痩せていきました。帰ってこない日も多かったです。

清も、新しい兄弟も、そうなっちゃうんだ、って、思っ、て…

俺、嫌で…清が、死んじゃうの、嫌だった。このままじゃ、お父さんみたいに、清が殺されちゃうって、思いました。

お兄ちゃんだから、助けて、あげなきゃ、って。弟、俺の…守って、あげなきゃ、思って…

俺、兄弟、嬉しかったんです。清、中学同じで、知ってる人で、あんまり喋ったことなかったけど、よく目が合って、たまに話して、お話すると、優しくて。

俺、清としたの、ダイベンシャ様を殺したあと、お城のお部屋の中だけです。

中学の時によく目が合ったの、意味が、わかったんです。お勤めをするようになってから。ダイベンシャ様が興奮してるの、きっと、清も同じなのかなって。俺のこと、好きだったのかなって、思って…気づくの、遅かったです。相手がダイベンシャ様じゃなくて、清なら、良かったのに、って…兄弟だから、駄目なのに。中学生の時、気づきたかった、です。

兄弟、だけど、最後だからって思って、しました。

俺、たくさん、いろんなこと、忘れたり、違う思い出を作っちゃったりして、時々友達に怒られたり、キモがられたりしてました。嘘つきって言われたりとか、して…お父さんと、清だけ、嘘つきって、言わなかった。お父さん、いつも、『そうだね』って、笑ってくれた。清、も、『そうだな』って、笑っ、て…うれし、かった。

清は、俺が殴った時、スマホ、出してました。俺、スマホが、ナイフに見えて、頭の中が、おかしく、なりました。清が刺そうとしてるから、止めなきゃって思って、でも、清が刺したんだって、思っ、ちゃって…ナイフ、刺してたら、血で、キラキラ、しないのに…テレビで見て、知ってたのに…

俺、刑事さんのドラマが好きで、いつも、見てました。学校、行けなくて、テレビ見るのだけ、楽しみだった。刑事さんは、いつもちゃんと事件を解決してて、すごいです。絶対に、逃げられないです、犯人…ちゃんと、自首しなきゃ、いけない。

ダイベンシャ様を殺したこと、清がやったって、思ってたの、駄目だって、思った。ちゃんと、記憶が、あるうちに、お話ししなきゃって。清は、大切な、人だから。清のせいしちゃ、いけない。俺、が、ちゃんと、頭が、大丈夫なうちに…

俺が、ダイベンシャ様を、殺しました。ごめんなさい。ごめん、な、さ…



光希は涙を流して頭を下げる。頭を下げたままぐらりと体が傾き、光希は椅子から転げ落ちた。

『大丈夫ですか!?意識が…』

『医務室へ!』

光希の周りに数名の人間が駆け寄る。バタバタと騒がしい中、映像は終わる。

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