第27話

警察の霊安室で両親と対面したときに感じた違和感がわかった。祖父は清を見なかった。祖父から見た清は父親に似ているらしい。確かに体格の良さは父親譲りだ。可愛い娘を奪った男に似た清を、祖父は愛せないと言う。

「わかった。卒業したら出ていく。それまでよろしくお願いします」

清は祖父に頭を下げた。改めて、光希が通報してくれて良かったと思った。この様子ではきっと、父親似の清が連れてきた光希の面倒など、見てくれなかっただろう。

ダイベンシャこと田町の捜査は続いていた。清は何度か警察に出向いた。知り得る範囲で清は権田や、別の刑事と話をした。

一度、権田と刑事が祖父の家に出向いてきたことがある。その刑事は田町の事件を担当していた。客間に通した二人はひどく真剣な顔をしていた。

「ご両親…お祖父様にとっての娘様ですが、自殺は強要されたものだとわかりました。田町が自白しました」

祖父は真っ青になって震えていた。祖父は血圧が高く、薬を飲んでいる。大事を取って寝室で横になってもらった。

改めて清だけが二人と向き合う。

「ご両親の遺書だが、やはり書かされたものだった。罪の重さについてはこれから決まるが…君の、遺書に対する証言の存在が大きかったそうだ」

「…あの、監督不行届のやつっすか」

「遺書が自筆で間違いないこと、しかしあの文面を考えたのが他人であるらしいこと。田町を突いたらすぐに自白したよ。調べていけばたどり着けた事実ではあるが、これだけ早く自白させるまでに至れたのは君のおかげだ。ありがとう」

清の両親はその場で文面を調べさせて書かされたようだ。かなり強引に死に追いやったらしい。結果、自殺教唆ではなく、殺人罪が適用されるかもしれない。

これは想像だが、光希の存在が大きかったのではないか。田町が執着していた光希が、鈴木家の息子である清と消えた。その怒りは両親に向いたのかもしれない。

両親は死に追いやられた。清は静かに受け止めた。



警察署出向く時、捜査協力ということで交通費として謝礼が出た。光希の病院は警察署からも近い。

清は何度か警察に出向くそのタイミングで、光希の見舞いにも行くようにした。

「きよし!!!」

いつも病室に入ると、ベッドから飛び上がって光希は出迎えてくれた。

清だけが行くときもあれば、権田と高輪が一緒にいるときもある。

「すみません、私もいます」

「ごんたんだ…」

「ごんだです」

「俺もいるよ~嫌そうにしないで、ごんたん可哀相」

「そうだぞ。ごんたん泣いちゃうだろ」

「殴るぞお前ら」

「…今日、事件の、お話?」

「はい。何度も申し訳ない」

「手短に、済ませますので」

権田はと高輪は頭を下げる。まだ精神年齢の安定しない光希だが、清がいると現在の年齢の光希でいることが多いらしい。事件のことをきちんと覚えている光希だ。

今までも何度か話をした。同じ話もした。あの豚といつからしていたのか、どんなことをしたか。どう殴りつけてその時何を思ったのか。

清がいないと光希は話し終えた後に失神してしまうらしい。そのため事件の話をする時はいつも清が傍にいた。

話を終えると光希は暗い顔で清を見る。

「清、気持ち、悪い?俺、あの人と、たくさん…」

「気持ち悪くねぇよ。お前は悪くない。あいつが何をしたか、ちゃんと知ってもらったほうがいい」

光希は被害者で、決して望んで行った行為じゃない。清はそれもわかっている。

清が光希の頭を撫でてやると、光希は少し笑顔を見せてくれた。

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