第19話 鬼の役職

【楓視点】

「帰って…きた…のら…」


そう言って眼の前に出てきたのは愛理ちゃんだった。左腕が変な方向に曲がっているし、右目も血を流していて、とにかく悲惨な状況だった。


「愛理ちゃん!?ひどい怪我だけどどうしたの?」


「へへっ…ちょっと無理しちゃったのら。でもね。確保してきたのら…【水鬼】ついでに【妖】も。ちょっと疲れたから、寝ちゃって良いのらか?もう…動けな…」


愛理ちゃんがそう言って眠る。相当疲れたんだな。というか、実際一日ぐらい経っているし。僕も眠いし。


「【水鬼】を取ったんか…すげぇなあいつ…どんな戦い方したんだろ…」


氷室さんがそう呟く。鬼にもランクがあるのかな?


「氷室さん。鬼って強さのランクとかってあるの?」


「あぁ。あるぜ。一番強いのが【瞬鬼】、次が僕の【氷鬼】、そしてあいつが取った【水鬼】、【炎鬼】、【雷鬼】、【風鬼】、【雪鬼】、【情鬼】【影鬼】、【鬼】の順だ。【情鬼】と、【影鬼】はタッチできないが、【情鬼】は、逃走者3名の位置情報が常に分かるっていうやつだ。【影鬼】は相手の影に忍ぶことができるやつだ。そこで連絡を取って、捕まえるということもできる。」


ゑ。結構、市民陣営絶望的なやつじゃない?僕は関係ないけど。


「死んでいる鬼とかいるの…?」


「死んでいる鬼か?あ〜、そういえば、 【雪鬼】と、【情鬼】が死んだって連絡が入ってきたな。あ、そのかわりに、で新しく1人追加されたって聞いたな。」


もう逃走者勝ち目ないだろ。…ん?てことは氷室さんめちゃくちゃ強くね?!


口には出さなかったが、そんな事を考えていると、自分の影から人が出てくる。


「やぁ!」


「うわっ!びっくりしたぁ…あ、この人が影鬼か…それにしても急に出てこないでくださいよ…」


まだ中学生ぐらいの子だろうか。やんちゃそうな感じだった。


「ねぇ、氷室さん、このお兄さんって裏切り者なの?」


「そうだ。こいつは裏切り者だ。だからこんなに親しくしてるんだ。」


「そっか〜、じゃあ、鬼を1回全員呼んだほうが良いかなぁ?皆とこのあとのことについて会議したほうが良いと思うんだけど…」


「まぁ…任せるよ。でも注意してほしいのは、やたらと好戦的なめんどくさいやつがいるってことを忘れるなよ。面倒くさくなることを避けたいなら、呼ばないほうがいぞ。」


うん。呼ばないでほしい。面倒くさいのは嫌だから。大体、私達に恨みを持っている人を集めたところで、大乱闘は必至だからね…


「そっか、そうだよね。面倒くさいのは嫌だけど、こんなときこそ皆で話しておくべきだと思うんだよね。だから、皆呼ぶね!」


ええ〜っ!面倒くさいんじゃないの?!だったら呼ばないほうが…


「あ!もしもし!皆で話をしたいからさ!来てくれない?来てくれる!?絶対だよ!絶対!うん!じゃあね〜!」


あっ…これ、大乱闘必須のやつだ…


そう思った頃には、影鬼が全員を呼んでいた。

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